自らのフェイクを棚に上げ首相のサンゴ発言をフェイクと断ずる沖縄紙
◆社説で知事を後押し
「どっちがフェイクか」と思わず唸(うな)ってしまった。安倍晋三首相が6日のNHK番組「日曜討論」で、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の埋め立てについて「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移している」と述べたところ、地元紙の琉球新報が社説で「フェイク発信 許されない」と断じていたからだ(9日付)。
この社説に刺激されたのか、東京は12日付社説で「事実誤認が目に余る」、朝日は12日付メディア欄で「『不正確』発言、放送は妥当か」と続いた。いずれも琉球新報の言説に沿った記事で、安倍首相の発言のみならず、それを放映したNHKまで問題視している。
だが、安倍首相の発言は本当にフェイクなのか。沖縄タイムスは8日付で首相発言を取り上げたが、それには「沖縄防衛局はオキナワハマサンゴ9群体について、2018年7月13日に知事の特別採捕許可を得て移植作業に着手し、8月4日までに移植を終えた」とある。
土砂投入されているのは第1区画で、そこには移植対象のサンゴは存在しない。移植したのは周辺海域のもので当然、工事を進めるためだ。辺野古の環境保全策を議論する環境監視等委員会(中村由行委員長・横浜国立大学大学院教授)は昨年8月2日の第16回会合で、9群体の移植作業を了承している(沖縄タイムス同8月3日付)。
言うまでもなく安倍首相の発言はこのことを指す。それをフェイクと断ずるのは、それこそフェイクだ。首相のサンゴ発言に対して玉城デニー知事が翌7日に「現実はそうなっておりません」とツイッターで反論しており、社説はその後押しなのだろう。
◆人質にされるサンゴ
県は現在埋め立て工事を進めている区域に限らず、埋め立て区域全体の移設対象のサンゴを移植した上で護岸の工事を進めるべきだと主張し、他区域の移植を許可していない。これでは移植したくてもできない。県は環境保全を口にするが、要するに移設を阻止するためサンゴを人質に取っているだけの話だ。
毎日1月7日付は「『偽ニュース』と闘う」と題して地元紙が昨年9月の沖縄県知事選でネット情報などを検証する「ファクトチェック」(真偽検証)や「ツイッター分析」を行ったことを評価し、「ネットの普及により、誰もが『メディア』となった平成。フェイクとの闘いが始まった」としている。
その中で、元琉球新報論説委員長の前泊博盛・沖縄国際大学教授が「フェイク情報を放置すれば地域社会に疑心暗鬼が生まれ、分断が進む。事実の確認は、メディアの最も大きな役割になっている」と述べている。
だが、沖縄ではメディア自らが事実をねじ曲げ、フェイク情報を垂れ流し、保守言論にフェイクのレッテルを貼っているのだ。これを放置している方がネット情報よりはるかに問題が大きいはずだ。そもそもネット上のフェイク情報とは如何(いか)ほどのものだったのか。
◆左派紙を読まぬ若者
沖縄タイムス7日付に興味深い記事が載っている。県知事選でのネット上の「フェイクニュース」について同紙が県内の大学生や専門学校生525人を対象にアンケートを行ったところ、偽ニュースを見た学生は11%にすぎなかった。見ていない学生は約86%で、「県知事選ではフェイクニュースが多くの若者の投票行動に影響を与えたとされていたが、異なる実態が浮かび上がった」としている。
同紙にはフェイクの中身が書かれていないが、描くのはネット上に「ネトウヨ」(ネット右翼)情報があふれ、それに接する機会の多い若者が影響を受けて保守化しているという構図だ。だが、違っていた。
学生の8割はフェイスブックを使っておらず、毎日使うのはわずか6%で、「県内の新聞は39・3%が全く読んでいない現状が明らかになった」という。なるほど、若者が保守化しているのはネット情報のせいでなく、左派紙を読まないからだと合点がいく。
麻生太郎副総理が「新聞読まない人は、全部自民党なんだ」と述べたことがあるが、それを実証するかのようなアンケート結果だった。とまれ自らのフェイクを棚上げにする沖縄紙にネット情報を批判する資格はない。
(増 記代司)