参院選1票の格差の是正に向け選挙制度改革を


 7月参院選の1票の格差をめぐる15件の訴訟の判決が出そろった。最大格差4・77倍に対し、全判決の内訳は「違憲状態」12、「違憲」2、「違憲・無効」1だった。

 最高裁判決を来年以降に控えているが、通常国会で格差是正に向けた選挙制度改革について議論すべきだ。

訴訟の判決出そろう

 最高裁は、最大格差が5・00倍だった2010年参院選について、12年に「違憲状態」の判決を下した。国会は「4増4減」の措置を講じて、選挙区の大阪、神奈川の改選定数を3から4に増やし、福島と岐阜を2から1に減らして格差を5倍未満に抑えた。

 一連の訴訟では、この「4増4減」への評価が焦点となったが、「違憲状態」の判断が多数を占めたのは、おおむね国会の努力があったことを認めたと言えよう。

 しかし、広島高裁岡山支部のように「4増4減」を全く評価せず、「違憲・無効」とする例も見られた。

 昨年衆院選の1票格差訴訟でも、広島高裁岡山支部は「違憲・無効」を言い渡している。民意が示される選挙を安直に「無効」とすることには危惧の念を禁じ得ない。だが、15件の判決には国会にさらなる努力を要請し、格差是正への取り組みを見守ろうとする司法の意思が表れている。

 しかし昨年、格差が5倍から4倍台に是正されたにもかかわらず、一連の訴訟で立て続けに「違憲状態」「違憲」「違憲・無効」という判決が出たことは懸念される。

 1票の格差に関して、憲法14条の法の下の平等を、廃藩置県に始まる都道府県の行政区分に杓子定規に当てはめることには限界がある。最高裁には慎重な判断を求めたい。

 一方で、国会による選挙制度改革への取り組みが遅いのも事実だ。現に衆院をめぐっては民主党政権下で議論がまとまらなかった。

 格差是正のため選挙区の定員を増減させる措置は、大都市への人口集中と地方の過疎化から難しくなりつつある。

 参院選挙区は都道府県を区割りとし、「4増4減」によって2人区を減らし、4人区を増やした。これで1人区が31になっている。

 最大格差は有権者人口が最も少ない鳥取選挙区と、定数2の北海道選挙区との間の4・77倍だが、増減可能な複数区が徐々に減ってきた。

 かつて衆院では中選挙区制の下で、1票の格差には政治の混乱を最も回避しやすい定数増によって対処したため、議席数は511に膨れ上がった。だが、歳費と定数の削減が求められる状況では批判を招こう。

 しかし、比例代表の定員を減らし選挙区定員を増やすなど、参院でも選挙制度の見直しを検討する時期に来ているのではないか。

参院の在り方議論を

 衆院と選挙制度まで似通っていては、参院の存在意義が問われかねない。

 選挙制度改革を含め参院の在り方について議論を重ねる必要がある。

(12月28日付社説)