辺野古埋め立て申請承認、名護市長選のヤマも越えたい


 沖縄県の仲井真弘多知事が、政府による名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認すると表明した。これにより長い間、懸案だった宜野湾市にある米軍普天間飛行場の辺野古への移設が大きく前進することになった。仲井真知事の重たい決断を評価する。同時に、日米同盟の一層の強化に向けて移設をさらに確実なものにするため、来年1月19日に予定されている名護市長選のヤマも越えたい。

苦渋の決断を評価

 もともと辺野古移設を容認していた知事だったが、民主党政権が「最低でも県外移設」を掲げたため、再選が懸かった2010年の知事選の公約では県外移設を掲げざるを得なかった。地元の自民党県連なども「県外移設」へと舵を切り容認派は少数となった。ところが、安倍晋三政権の誕生により再び容認・推進派の声が盛り返した。

 知事としては国益と自らの公約の間で揺れ、苦渋の決断だったろう。しかし、もし決断が先送りされれば普天間飛行場が固定化し危険除去ができないばかりか、在沖縄海兵隊のグアム移転にも支障が出るなど日米同盟関係にも悪影響を及ぼすことは間違いなかった。

 政府・自民党幹部の努力も大きかった。仲井真知事が「安倍内閣の沖縄に対する思いが、かつてのどの内閣にも増して強いと感じた」と述べたように、首相はブレずに誠意をもって沖縄県側との話し合いを続けた。それが知事の信頼を得ることにつながったのだろう。

 首相は、21年度まで沖縄振興予算を毎年3000億円台計上すると約束した。基地負担軽減策についても沖縄県側が要望した4項目すべてを受け止め、米国と交渉をまとめていく強い姿勢を示した。これらは首相の公約であり、努力しなければならない。

 その中での難題は普天間飛行場の返還時期を早めることだろう。日米両政府は今年4月、「22年度以降」の返還で合意したが、知事は「5年以内の運用停止」を求めた。実現には工期の短縮などの工夫も必要であるが、ここは日米両政府がしっかりと協議をして早期返還に結び付くよう尽力すべきだ。

 知事が「県民の意思に関係なく国際情勢は緊張している」と語るとともに「沖縄は一定の役割を果たさなければならない」と強調したことは意義深い。中国の一方的な防空識別圏の設定や尖閣諸島周辺海域での相次ぐ領海侵犯、北朝鮮の不穏な動向など日本を取り巻く安全保障環境は悪化している。沖縄はその最前線に位置しており、抑止力を高める上でも普天間移設は不可避なのだ。

公明は地元の説得を

 次の焦点は移設先である名護市の市長選の行方である。現市長は辺野古移設反対を掲げており、知事が埋め立てを容認しても市の協力を得られなければ速やかな移設はできない。反対派や県内外の過激な人たちなどの妨害行為も予想される。

 辺野古移設容認派側は、幸いにも一本化した。公明党は党本部が辺野古移設賛成、地元が反対を変えない。政府・与党挙げて市民に移設の意義をしっかり説明し勝利することが望まれる。

(12月29日付社説)