日露2プラス2、露の対北姿勢は甘過ぎる


 日露両政府はモスクワで外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。日本側は河野太郎外相、小野寺五典防衛相、ロシア側はラブロフ外相、ショイグ国防相が参加した。

次官級協議を年1回開催

 日露双方は北朝鮮の非核化に向けた緊密な連携を確認したほか、安全保障分野の協力拡大で合意。2プラス2の準備会合として、外務・防衛次官級協議をおおむね年1回開くことでも一致した。

 しかし、日本側が国連安全保障理事会の決議に基づく厳格な対北制裁の継続を呼び掛けたのに対し、ロシア側が制裁緩和に前向きな従来の立場を崩さなかったことは理解し難い。

 北朝鮮は「完全な非核化」で合意した6月の米朝首脳会談後も、核物質の生産や大陸間弾道ミサイル(ICBM)製造を継続しているとみられている。こうした中で制裁を緩和すれば、北朝鮮の非核化はさらに遠のくだろう。ロシアの対北姿勢は甘過ぎるのではないか。

 ロシア側は、日本が導入を決めた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について「米国の世界的なミサイル防衛(MD)システムの一部だ」と強く抗議した。だが、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威はなくなったわけではない。日本がMD態勢の強化を図るのは当然である。

 小野寺氏は「わが国の純粋な防衛システムであり、ロシアに脅威を与えるものではない」と述べた。今後も理解を得られるよう努める必要がある。

 一方、日本側は北方領土でのロシアの軍備強化などについて「冷静な対応」を要請した。日本固有の領土である北方領土をロシアが不法占拠し、最新鋭のミサイル配備や軍事演習などを実施していることは決して容認できない。日本側はもっと厳しく抗議すべきだ。

 北方領土をめぐっては2プラス2に先立つ外相会談で、共同経済活動の事業具体化に向け、今月16~20日に民間調査団を派遣することで合意した。共同事業で日露間の信頼を醸成することは確かに重要だが、現在のロシアの姿勢を見る限り、北方領土返還につながるのか疑問視せざるを得ない。

 ロシアは国際社会で孤立を深めている。2014年のウクライナ南部クリミア半島併合では欧米諸国が対露制裁を発動。今年3月の英国での元ロシア情報員暗殺未遂事件では、ロシアが軍用神経剤「ノビチョク」を使ったことで欧米との対立が激化し、大規模な外交官追放合戦に発展した。「新冷戦」と言われる水準まで関係は悪化している。

 国内ではプーチン政権が5月で通算4期目に入ったが、長期政権に対する閉塞感も漂っている。大統領就任式の直前には、野党勢力指導者ナワリヌイ氏の呼び掛けでロシア各地で反政権デモが行われた。

領土返還へ強い決意示せ

 安倍晋三首相は9月にロシア・ウラジオストクでプーチン大統領と会談する。北方領土の一日も早い返還は日本国民の悲願だが、成果を焦ればロシアに足元を見られる。まずは、安倍首相が首脳会談で返還に向けた強い決意を示すべきだ。