踊り場の日本経済 資源高、貿易摩擦が心配だ


 日銀の6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業で2期連続して景況感が悪化し、景気の回復が鈍っていることを鮮明にした。

 悪化の要因は資源価格の上昇と米国の保護主義による貿易摩擦の拡大である。好調な海外景気に支えられてきた日本経済は踊り場を迎えつつある。

 米中間では報復合戦

 大企業製造業での2期連続の景況感悪化は5年半ぶりで、2012年12月末の安倍晋三政権発足後では初めてである。

 景況感の悪化が大きいのは、自動車や鉄鋼、非鉄金属など。原油、鉄など幅広い原材料が値上がりし、仕入れ価格が上がっても販売価格への転嫁が進まないためである。大手機械メーカーからは「鉄鋼部材の調達価格が上昇し、利益を押し下げている」との声が聞かれる。電気機械ではIT需要の一服も、企業マインドの低下につながった。

 これらに加え、米国の保護主義による貿易摩擦拡大への懸念である。トランプ米政権による一方的な関税引き上げなどの措置は、米中間では追加関税をめぐる報復合戦に発展。米欧間でも同様の状況になりつつある。

 米国はさらに輸入自動車や同部品についても、追加関税を検討している。日本ももちろん、その対象である。これが問題なのは、たとえ米国に直接輸出していなくても、部品に関税がかかれば現地の販売価格が上昇してしまうからで、部品メーカーでは、米中間の摩擦が深刻化すれば中国向け輸出にも影響が出ると懸念する。

 一方、今回の短観では、18年度の設備投資計画が大企業全産業で前年度比13・6%増と高い数字が出た。人手不足に伴う省力化投資などで、企業の投資意欲が強いことを示し、日本経済は踊り場を迎えつつも堅調さは維持していると言える。もっとも、今回は年度初めの調査(回答期間5月29日~6月29日)で高めに出やすい傾向があることに留意すべきであろう。

 大企業製造業の18年度想定為替レートは、1㌦=107円26銭。前回調査より2円40銭、円高方向に見直された。同110円台の実勢より円高のため、今後の業績上振れ要因になるとの見方が一部にある。3カ月先の見通しでも、大企業製造業の景況感は横ばいの予想である。

 だが、やはり大きな不安材料は、貿易摩擦拡大の懸念と原油をはじめとする資源価格の動向である。貿易摩擦の激化や原油価格の急騰といったリスクがさらに顕在化すれば、大企業製造業の先行き見通しや設備投資計画は大きく下振れする可能性が小さくない。

 業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値である業況判断指数(DI)が4期ぶりに1ポイントとわずかながら改善した大企業非製造業も、先行きはプラス21と3ポイント悪化の見込みと慎重である。

 問われる「働き方改革」

 雇用人員の判断では、大企業全産業で「不足」超過幅が2年ぶりに緩和したが、大幅な人手不足に変化はなかった。今国会で成立した「働き方改革」関連法が中長期的な生産年齢人口の減少をも含め対応できるか中身が問われてこよう。