米「宇宙軍」創設、軍事利用の強化が必要だ
トランプ米大統領は、伝統的な五つの軍とは別に新たに「宇宙軍」を米軍に創設する考えを明らかにした。
宇宙空間の軍事利用で台頭している中国やロシアに対抗する狙いがある。
中露で開発が活発化
米軍は陸海空の各軍に、沿岸警備隊と海兵隊を加えた五つの軍から成る。トランプ氏は国防総省に米軍6番目の部門となる宇宙軍創設のための手続きに入るよう指示した。ダンフォード統合参謀本部議長が中心となって検討する。
確かに、イラクやアフガニスタン、シリアでの戦闘、テロとの戦いなど、あらゆる作戦で米国は宇宙技術への依存を強めている。今後、一層顕著になることは疑いない。トランプ氏は、宇宙軍の創設は国家の安全保障と雇用創出による経済発展を促すと語った。
世界では、軍事面の宇宙開発が活発化している。中国は2015年末に習近平国家主席の主導の下、人民解放軍に宇宙、諜報、サイバー機関を統合した戦略支援部隊(SSF)を創設した。月面基地を設置する計画も独自に進めている。中国の宇宙開発と軍事技術開発は表裏一体だと言える。
ロシアも15年に空軍を再編して「航空宇宙軍」をつくった。通常の空軍の軍事活動に加え、軍事衛星の打ち上げやミサイル防衛、宇宙空間の監視を担っている。
中国やロシアは既に米国の軍事衛星を破壊、操作不能にできる技術を持っている。衛星攻撃兵器(ASAT)などの開発に余念がない。トランプ氏が危機感を抱くことは理解できる。トランプ氏は中国やロシアなどが宇宙分野で米国をリードすることを望まないと強調した。
米軍の機構改革や予算は連邦議会の承認が必要だが、新たな軍の創設は政府内や議会に慎重な意見も多い。米軍内部からも強い反発がある。
米議会が昨年、宇宙軍創設を模索した際、マティス国防長官やウィルソン空軍長官は「組織が複雑化し、不要な費用が掛かる」と反対した。しかし米国や同盟国の安全を守るには、宇宙での軍事態勢を強化することも求められる。
トランプ氏は「米国人の特質は新たなフロンティアを切り開くことだ」として、早ければ1年後には再度、月面着陸を行うとも語った。最終的には、火星にも人を送りたいとしている。民間の宇宙産業を積極的に受け入れる考えも示した。企業などによる宇宙利用が一層進むことも期待される。
日本は緊密な連携を
日米両政府は昨年8月、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、宇宙・サイバー分野での協力を着実に推進していくことで一致している。
防衛省は米コロラド州の空軍基地に職員や自衛隊員を継続的に派遣し、「宇宙業務課程」を履修させている。22年度には、宇宙ごみ(スペースデブリ)が人工衛星に衝突するのを防ぐため、デブリを常時監視する部隊を航空自衛隊に新たに発足させる。宇宙分野でも米国と緊密に連携すべきだ。