トランプ政権1年、「力による平和」を推進せよ
トランプ米大統領が就任1年を迎えた。トランプ氏は「米国第一」を掲げ、米国の利益を最優先する姿勢を示してきた。外交・安全保障分野では「力による平和」を推進し、軍事力や同盟国との連携を強化する方針を打ち出した。
北朝鮮への圧力を強化
内政では雇用拡大につながる政策を重視し、約30年ぶりとなる大型減税を実現。株式市場は最高値を更新した。
昨年は大統領令などでオバマ前政権の法律を15本覆し、現状打破に専念。企業競争力の足かせになるとして規制の緩和をエネルギー分野を中心に推進した。一方、環太平洋連携協定(TPP)や地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したことは物議を醸した。
核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対しては「(オバマ前政権による)『戦略的忍耐』の時代は終わった」と宣言し、圧力強化にかじを切った。北朝鮮のミサイルは地域の安定を脅かしている。トランプ政権が東アジアの同盟国である日韓両国との連携強化によって北朝鮮の核放棄を目指すのは適切だと言える。
トランプ氏は「力による平和」を推進する方針だ。昨年末に公表した「国家安全保障戦略」では、中国とロシアを国際秩序の現状変更を目指す「修正主義勢力」と強く批判。中国については、アジアで米国の影響力排除を狙っているとし、南シナ海における人工島造成や軍事基地化を「周辺国の主権を脅かし、地域の安定を損なっている」と非難した。
昨年10月の中国共産党大会では、習近平総書記(国家主席)の権力基盤が強化され、「強国路線」が鮮明となった。中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」では、覇権主義的な動きが警戒されている。トランプ氏は昨年11月の安倍晋三首相との首脳会談で推進を確認した「自由で開かれたインド太平洋戦略」などで中国を牽制(けんせい)する必要がある。
トランプ氏の支持率は、戦後歴代の大統領では最低の水準と言われる一方、共和党支持者の実に80%以上が、今もトランプ氏を支持している。それにもかかわらず、支持率が40%以上に伸びないのは、移民政策などに反対する米国民も多いためだ。国民の世論が賛否両論に二分されている。
トランプ氏の型破りな政治姿勢に世界が振り回されたことは否めない。ツイッターによる発言など大統領らしからぬ言動が混乱を招いたことも確かだ。
もっとも、米国で進む有権者の二極化はオバマ前政権の時代から見られたものだ。オバマ氏は不法移民の定住容認などの政策を進めたが、こうした問題のほか、人種、同性婚などでオバマ氏の取り組みに不満を覚えた白人もいたため、米社会は分断に向かった。
社会を統合する努力を
トランプ氏にとって、今年は中間選挙に向けて目に見える成果が一層求められる正念場となりそうだ。しかし、このような社会の分断を放置すれば民主主義を揺さぶることにもなりかねない。社会を統合していく努力も求められる。