8年ぶりのメリークリスマス 米ホワイトハウス

特報’17

トランプ政権、伝統回帰
オバマ時代は宗教排除

 米ホワイトハウスが職員の家族や関係者らに送るクリスマスカードに「メリークリスマス」の文字が復活し、話題を呼んでいる。オバマ前大統領は宗教色を排除することが多く、クリスマスカードもホリデーカードと言い換えていたが、トランプ政権は毎年恒例のホワイトハウス内の飾り付けもキリスト教の伝統を前面に押し出したものにし、保守派から称賛されている。(ワシントン・岩城喜之)

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子供たちと一緒にクリスマスの飾り付けを作るメラニア・トランプ米大統領夫人(中央)。後ろの暖炉には「メリークリスマス」の文字が掲げられている(UPI)

 「米大統領として米国と世界にメリークリスマスと言えるのは、とてつもなく栄誉だ。すべての人が素晴らしいクリスマスと新年を過ごせるよう願っている」

 先月30日にホワイトハウス前広場で行われた恒例のクリスマスツリー点灯式。トランプ氏はイエス・キリストの生誕や宗教の伝統に言及しながら、何度も「クリスマス」を口にした。

 米国では近年、他宗教への配慮を求めた「ポリティカル・コレクトネス」(政治的正しさ)などから、気軽に「メリークリスマス」と言いにくい雰囲気があり、キリスト教徒の間で不満が高まっている。

 オバマ氏は「メリークリスマス」との言葉を使わなかったわけではないが、ホワイトハウスからできる限り宗教色を排除する傾向にあった。

 就任1年目の2009年には、12月になると毎年ホワイトハウスに飾られていた「キリストの生誕」の場面を表した人形を撤去するかどうかが、政権内で真剣に検討された。この時は批判されたことで人形は置かれたが、その後もクリスマスの時期になるとキリスト教に関連した言葉が次々と消えていった。

 まず関係者に送る「クリスマスカード」を「ホリデーカード」と言い換え、「クリスマス」の文字もそれまでの慣例を破って記載しなかった。カードにはオバマ氏がホワイトハウスで飼っていた犬のイラストが何度も掲載されていたことから、FOXニュースでコメンテーターを務めるトッド・スターンズ氏は「ホワイトハウスのクリスマスは何年間もイエスでなくペットが中心だった」と批判した。

 またクリスマスツリーについても「ホリデーツリー」と呼称。ニューヨーク・タイムズ紙は「オバマ政権は非宗教的なクリスマスを計画していた」とし、オバマ氏の宗教に対する態度から驚くべきことではなかったと指摘した。

 一方のトランプ氏は、クリスマスカードに「メリークリスマス」の文字を8年ぶりに復活させ、ホワイトハウス内の装飾を伝統的なキリスト教のクリスマスを意識したものにするなど、宗教的要素を徹底して排除していたオバマ政権からの「政策転換」を進めている。

 このためキリスト教徒からは評価の声が相次いでいる。保守派に大きな影響力を持つ福音派のビリー・グラハム牧師の息子フランクリン・グラハム氏は、トランプ氏がキリスト教色のクリスマスを前面に押し出していることについて、「私の人生の中でトランプ氏ほどキリスト教の信仰への態度を強く、率直に取ろうとしている大統領は見たことがない。われわれは祈りと共に彼を支援する必要がある」とツイッターに書き込んで称賛した。