「希望の党」結党、選挙の駆け込み寺とするな
新党「希望の党」が結党され、東京都の小池百合子知事が代表に就いた。安倍政権批判の受け皿となる新たな保守政党をつくり、本格的な二大政党制の実現を目指す方向性は評価する。
ただ、政権選択となる衆院選の直前に国会議員でない小池氏が代表に就任することが、本当に政権獲得を目指したものとは思えない。そこになだれ込もうとしている民進党衆院議員の行動も「当選が最優先」の色が濃く国民の理解を得ることは難しいだろう。
ベースに保守の精神
党綱領では「寛容な改革保守政党」や「平和主義の下、現実的な外交・安全保障政策を展開」などを掲げ、小池氏は「ベースにあるのは保守の精神だ」と語った。
保守の立場で、責任ある政策を進めることに異論はない。このほか主要政策に憲法改正を据える考えも示しており、選挙戦では自民党との論戦で論議を深めてほしい。
だが、小池氏の立場には疑問も残る。小池氏は知事職を続投し、今回の衆院選には出馬しない考えを表明したが、総選挙である限り政権を目指すのが当然だ。代表が首相になる資格がないのであれば、誰をトップにしようと考えているのか。
新党については、小池氏に近い若狭勝衆院議員や、民進党を離党した細野豪志元環境相らが結成準備を進めていた。だが、安倍晋三首相が衆院解散の意向を固めた後、小池氏は自身が前面に出ることを表明した。現状では、政策や理念よりも小池氏の人気が希望の党の求心力となっていると言わざるを得ない。
これまで小池氏は「都政改革」をアピールするため、築地市場(中央区)から豊洲市場(江東区)への移転問題などで混乱を招いてきた面も否定できない。新党の綱領以外の具体的な政策を早急に決定する必要がある。
きょう、衆院を解散する安倍首相は「国難突破解散」と命名した。首相が指摘するように、少子高齢化や北朝鮮の核・ミサイル開発など国内外に難問が山積している。希望の党がこうした課題にどう対処するか、有権者の判断も問われよう。
不可解なのは民進党の動きだ。衆院選で党の公認候補を出さず、希望の党の公認をもらうよう党所属議員に説明したというが、無責任極まりない。
前原誠司代表は代表選で「新しい自民党に代わる選択肢を示したい」と述べ、支持率が低迷する党の立て直しを強調した。その決意表明は本気だったのか。まして自らは無所属で出馬するというのが事実であれば、国民を愚弄するにも程があると言える。
一方、小池氏は「政策に賛同してくれる人を個人として迎え入れる」と語っている。民進党の党丸ごとの合流は単なる選挙のための駆け込み寺であり、許されるはずはない。
リベラル議員は突き返せ
小池氏は希望の党の入党条件として、憲法改正と安全保障政策を重視する考えを示した。希望する民進党議員一人一人の政策をしっかりと確認し、改憲・安保に否定的なリベラル議員の公認は突き返す明確な姿勢が必要だ。