日本ファースト、二大政党制再建する役割を
小池百合子東京都知事に近い衆院議員である若狭勝氏が、政治団体「日本ファーストの会」の設立を発表し、年内の早い段階で新党を結党する意向を表明した。
東京都議会議員選挙での自民党と民進党の敗退、都民ファーストの会の勝利を踏まえたものだが、単なる批判票の受け皿づくりでなく、わが国の二大政党制の質を向上させる役割を果たしていくべきだ。
深刻な党内情勢の民進
都議選後、安倍晋三首相は内閣を改造し、民進党は選挙総活をめぐる党内議論の過程で蓮舫代表と野田佳彦幹事長が辞任を余儀なくされた。代表代行を4月まで務めていた細野豪志氏が離党するなど、民進党は9月の代表選を控える中でさらに党内情勢が深刻になっている。
このため、二大政党制の行き詰まりは打開し難い状況だ。1994年の公職選挙法改正により、衆院の選挙制度を複数定員の中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変えたのは、政権の長期化による弊害を一掃する効果を期待したものだった。政権交代が起きるかもしれない緊張感を生み出し、政党同士の切磋琢磨を促す狙いがあった。
そのためには、政権担当能力があり、選挙で過半数を得る可能性のある政党が複数なければならない。90年代に政界再編が進み、新進党、次いで民主党といった自民党に対抗し得る政党が結党。2000年代には本格的な二大政党制の時代になり、09年に民主党が政権交代を果たした。
ところが、民主党は政権を失ってから再起する手掛かりをつかめない。民進党に党名を変えて、安倍内閣の支持率が下がってもなお有権者から厳しい目を注がれている。
特に、一昨年から理念・政策の異なる共産党と手を結び、存在感が埋没している。共産党との共闘では二大政党の一翼を担えない。
共産党は綱領で共産主義を実現するための「民主連合政府」を追求しており、「民共共闘」を政権参加の足掛かりにしようとしている。これでは、総選挙が政権ではなく政治体制を選択するものとなる。
民進党内では、選挙での票を目当てに「民共共闘」を進めた執行部に反発した議員の中から離党者が相次いでいる。都議選では、そのような離党者を都民ファーストの会が推薦して受け入れた。
日本ファーストの会は、これを国政レベルで試みることになろう。焦点となるのは、東西冷戦時代から続く古いイデオロギー対立を受けた政策の対立ではなく、政策立案能力や改革の実行力といった政治の手腕だ。
都議選での自民党と都民ファーストの会の対決は、昨年の都知事選での小池氏出馬表明をめぐる自民党都連の対応に端を発している。政策の違いの小さい保守政党同士が選挙で競い合えば、より良い政治を行い得る方が選ばれる。
与党の油断戒める政治を
有権者が期待するのは、政権与党の油断や慢心を戒め、野党第1党の政権担当能力を磨く政治である。二大政党制の再構築が願われる。