米の制裁復活、キューバは民主化進めよ
トランプ米大統領は、キューバ系住民が多い南部フロリダ州マイアミでの演説で、キューバに民主化を強く要求するとともに制裁措置の一部復活を正式表明した。
関与戦略から大きく転換
トランプ氏は演説で「(キューバが)何万人もの自国民を殺してきたのと同じ人々に、今日まで支配されている」と述べ、カストロ政権を厳しく批判。「政治犯全員が釈放され、自由な選挙を実施しなければ、キューバに対する経済制裁を解除するつもりはない」と宣言した。
キューバでは、いまだに共産党の一党独裁体制が敷かれている。トランプ政権には民主化に向けた具体的行動に踏み切らないキューバに対する強い不満があり、制裁復活は理解できる。
オバマ前米政権は2015年7月、約半世紀ぶりにキューバとの国交回復を実現。オバマ前大統領は16年3月、現職の米大統領としては88年ぶりにキューバを訪問するなど、関係正常化に向けた動きが進んでいた。
これに対し、トランプ政権はオバマ前政権下で緩和した渡航、貿易に関する制裁を復活させた。関与を通じて民主化を促す前政権の戦略から大きな転換を図る姿勢を示したものだと言える。
米国人による観光目的でのキューバ渡航は、厳密には認められていない。ただし、制裁緩和によって教育活動など他の名目での実質的な観光旅行が可能になった。
このため、キューバでは米系ホテルの進出やクルーズ船の航行、民間定期便の就航が加速した。だが、制裁復活で観光目的の渡航禁止が厳格に適用されるようになる。
トランプ氏は制裁緩和について、一般国民ではなくカストロ政権を富ませただけだと強調。「完全に一方的なディール(取引)を直ちに取り消す」と宣言した。
また、ティラーソン米国務長官もトランプ氏の演説に先立つ上院公聴会で、制裁緩和によって「キューバ政府が人権改善に向けて政策や振る舞いを変えたわけではない」と証言。「依然、政治的には敵対勢力だ」と主張し、厳しい姿勢で臨む考えを示唆した。
キューバの人権状況を調べている独立系人権団体「キューバ人権和解委員会」(CCDHRN)は、16年1~10月に政府当局に「恣意(しい)的に拘束」された活動家などは9125人で「過去7年間で最も多い拘束者数」と指摘している。トランプ氏の発言をカストロ政権は重く受け止めるべきだ。
制裁復活によって、キューバの軍や情報機関に資金が流れる商取引を米企業が行うことも規制される。キューバでは軍関係の複合企業体がホテル業を含む広範な業界に進出しており、制裁復活は経済に大きな影響を及ぼす可能性がある。
人権状況改善が必要
一方、トランプ氏は国交回復で開設した大使館は存続させるとも述べた。
キューバ側は米国で幅広い理解を得るためにも、人権状況の改善をはじめ民主化に向けた顕著な行動を見せることが必要である。