米海軍、中国をリムパックに招待 容易な情報収集許す

ビル・ガーツ

 リチャードソン米海軍作戦部長は、米軍の優位の必要性について強調する一方で、海軍演習への中国のスパイ活動にはそれほど懸念を抱いていないようだ。

 リチャードソン氏は戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア海域の支配への対抗に関する会議で、通常の紛争を抑止する米軍の能力が、他国の情報収集と指揮・統制の能力の向上によって損なわれていると指摘、「この傾向は大きな問題であり、急を要する」と語った。

 宇宙通信・監視、その他のハイテク技術の開発は、精密誘導兵器の開発競争の時代から、「意思決定優勢を競う時代」へと移っている。これは、監視-情勢判断-意思決定-行動の「OODAループ」と呼ばれている。リチャードソン氏は、衛星とセンサーの技術の発展によって、敵対国はこれまでできなかった方法で他国を監視することが可能になり、米軍の優位性が失われていると指摘した。

 大量の情報を操作することで、軍司令官に間違った判断、行動をさせる欺瞞への懸念も新たに生まれている。

 リチャードソン氏は、スポーツの例を挙げて「土曜日に対抗試合を控え、準備をしているとする。相手チームを招いて、練習をすべて見させるとどういうことになるだろう。試合のためにどのような準備をしているかを見せることになる。今、米軍も同じようなことをしようとしている」と警鐘を鳴らした。

 だが、リチャードソン氏は、この考え方をアジアの主要敵対国、中国に適用するつもりはないようだ。

 相手チームを練習に招くことはないと言ったが、それは、中国を環太平洋合同軍事演習「リムパック2018」に参加させないということかとの記者(ビル・ガーツ)の質問に対して、リチャードソン氏の報道官クリス・サーベロ氏は明確な答えを避けながら、「リチャードソン氏は、演習に敵対国を招待するかしないかを言っているのではない。米国の演習が、センサーの増加によってかつてないほど細かく観察されるようになることは避けられないということだ。これは避けられない。監視されている」と説明した。

 サーベロ氏は、中国を、隔年で実施されるリムパックに招くことは「まったく別の問題」と指摘、米国の中国との関係はそれほど単純ではないと主張した。

 その数日後、米海軍は、中国を来年のリムパックに招くことを発表した。25カ国の海軍が参加し、ハワイとカリフォルニア南部の近海で実施される。

 中国はこれまで、リムパック参加の際に情報収集艦を送り込み、将来の交戦に備えて、米国と同盟国の海軍の能力に関して情報を集めてきた。