米副大統領来日、対北圧力で緊密な連携を
ペンス米副大統領が来日し、安倍晋三首相との会談や日米経済対話の初会合を行った。首相との会談では、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への圧力強化で一致した。
軍事力行使も排除せず
ペンス氏は「米国は平和を追求しているが、平和は力によってのみ初めて達成される」と述べ、軍事力行使も排除せず厳しい態度で北朝鮮に臨む考えを強調。首相はトランプ米政権の強い姿勢について「評価する」と表明した。
北朝鮮はペンス氏の訪韓直前にも、失敗に終わったものの弾道ミサイルを発射した。近く6回目の核実験に踏み切るとの観測も出ている。こうした挑発行動を、これ以上エスカレートさせるわけにはいかない。北朝鮮への圧力強化で日米両国は緊密に連携すべきだ。
首相とペンス氏は北朝鮮問題の解決に向け、中国にさらに大きな役割を果たすよう働き掛けることでも一致した。ペンス氏は「中国は問題をきちんと理解し、同じ行動を取ってもらえる」との認識を表明した。
中国はこれまで、圧力強化で北朝鮮の体制が動揺し、難民流入などにつながることを警戒してきた。しかし地域の大国として、北朝鮮の危険な挑発を放置することはできないはずだ。日米韓と連携し、北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させるように影響力を行使する必要がある。
もちろん、日本にとって中国の海洋進出も大きな脅威だ。ペンス氏は首相との会談で、中国が一方的に領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用範囲だと表明した。対中抑止力向上に向けた日米防衛協力も進めていくことが求められる。
一方、ペンス氏は日米経済対話で麻生太郎副総理兼財務相と会談。共同声明では①貿易・投資のルールや課題に関する共通戦略②経済・構造政策での協力③雇用創出を促進するインフラなどの分野別協力――の3本の柱に基づいて協議を進め、「近いうちに」具体的成果を目指すと明記した。
ただ会合後の記者会見で、ペンス氏は両国の対話が「自由貿易協定(FTA)交渉に発展する可能性がある」と発言。トランプ政権が離脱を決めた環太平洋連携協定(TPP)など多国間交渉にこだわる日本側との思惑の違いを鮮明にした。
米国は今後の協議で農産物や自動車の市場開放を日本に強く求める可能性がある。だが日本としては、TPPの合意以上の譲歩はできない。
米国のTPP離脱で、中国が主導権を狙う東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への関心が高まっている。しかしTPPには、アジア太平洋地域における中国の覇権主義的な動きを牽制(けんせい)する意味合いもある。日本は米国のTPP復帰の可能性も念頭に、当面は米国抜きの発効を目指すべきだろう。
「公共財」の価値高めよ
ペンス氏は首相との会談で「日米同盟は北東アジアにおける礎石だ」とも語った。
日米同盟は地域の「公共財」と言われる。その価値を高めるためにも、同盟強化に向けた不断の努力が求められる。