10~12月GDP、自律的な拡大には程遠い


 2016年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、実質で前期比0・2%増、年率換算では1・0%増と4四半期連続のプラス成長になった。

 しかし、内需の柱である個人消費は相変わらず低迷し、成長をリードしたのは外需の輸出である。経済の好循環による自律的拡大には程遠い。消費増に向けた対策が肝要である。

 個人消費が4期ぶり減

 実質GDPの増減にどれだけ影響したかを示す寄与度は、内需がマイナス0・0%、外需がプラス0・2%と引き続き外需主導の経済成長だった。

 輸出は海外経済の持ち直しにより前期比2・6%増と、今回の成長を牽引(けんいん)した。これに伴い、企業の投資に対する慎重姿勢が和らぎ、設備投資が0・9%増と2期ぶりに拡大した。

 ただ、自動車をはじめとした対日貿易赤字に不満を抱く米国のトランプ大統領が今後、どのような政策を実施するのか。先の日米首脳会談では貿易、為替などで批判は出なかったものの、合意した経済対話の成り行き次第では日本企業の輸出に影響を与える可能性も否定できず、外需頼みの成長がいつまで続くかは不透明である。

 GDPの6割弱を占め、内需の柱である個人消費は、0・01%減と4期ぶりにマイナスに転じてしまった。天候不順による価格の高騰で野菜が伸び悩んだことなどもあるが、弱さは相変わらずである。

 日本経済の自律的成長には、個人消費の持ち直しが不可欠。その意味では、今後本格化する春闘での賃上げがどこまで実現するかが焦点の一つになってこよう。

 17年3月期の企業決算では、為替要因などから業績予想の上方修正が相次いでいるが、数字そのものは小幅ながら減益となる見込みである。トランプ大統領の政策が見通しにくい面もあり、企業業績が今後、着実に上向いていくかは不透明で、それが春闘での賃上げにどう影響してくるか。

 賃上げは政府の要請もあり、労使双方とも、その必要性では一致しているが、どの程度になるかが問題だ。賃上げが進まなければ、企業業績の改善が所得増、消費拡大に波及し、それが設備投資増に結び付く経済の好循環の実現は難しい。

 10~12月期は輸出とともに、輸入も1・3%増と伸びた。これは原油などの価格の上昇や米大統領選後の円安進行などの影響が主で、期待された内需の回復ではなかった。

 当面は比較的好調な外需の持続と、昨年にまとめた経済対策の効果が出始めることを前提に、年率1%程度の緩やかな成長が見込まれているが、安倍晋三政権が期待する実質2%、名目3%成長にはまだまだである。

 人口減少も踏まえ対策を

 10~12月期の実質雇用者報酬は前年同期に比べ2・0%増えたが、それでも個人消費が冴(さ)えない背景には何があるのか。消費者の根強い節約志向、賃金の伸び悩み、盤石でない社会保障制度による将来不安のほか、経済の成熟化や人口減少の影響といった要因もあろう。総合的な検討、対策が必要である。