景況感の好転、内需の着実な回復に生かせ


 米連邦準備制度理事会(FRB)が14日に利上げを決めたことを受け、外国為替市場は1㌦=117円台のドル高・円安が進行している。日本の輸出企業にとっては追い風である。

 14日発表の12月日銀短観では、大企業製造業が1年半ぶりに景況感を改善させたが、内需関連の業種、設備投資は依然低調である。為替など外部環境の好転を、内需の着実な回復に生かしたい。

 企業の姿勢は依然慎重

 FRBの利上げは1年ぶりである。市場では既に織り込み済みだったが、連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の来年の利上げ見通しが2回から3回に増えたことで、利上げペースの加速が想定され、米金利の上昇見通しを背景にドル高・円安がさらに進行する可能性がある。

 折しも、14日発表の12月の日銀短観では、大企業製造業の景況感が6四半期(1年半)ぶりに改善した。原油などの市況の回復を背景に、石油・石炭製品や非鉄金属など素材業種を中心に企業心理が上向いたのが大きな要因である。最近の円安も電気機械などで輸出が持ち直し、景況改善に作用した。

 大企業非製造業の景況感は横ばい、中小企業は製造業、非製造業ともに改善した。

 12月短観の回答期間は、11月14日~12月13日と米大統領選後だったが、トランプ次期大統領の政策への期待から進んだ株高・円安は、想定為替レート――16年度の大企業製造業は1㌦=104円90銭で9月調査(107円92銭)から円高方向に約3円修正――など今回の調査結果に大きくは影響しなかったようである。

 短観が示す企業の姿勢は依然慎重である。今回の調査でも3カ月後の先行きは業種、企業規模の大小を問わず悪化を予想している。大企業全産業の16年度設備投資計画も前年度比5・5%増と9月調査(6・3%増)から下方修正され、同年度の経常利益は大企業の製造業、非製造業とも減益幅が拡大するとの予想である。

 最近の円安にもかかわらず、企業が依然として慎重姿勢を崩せないのは、内需が相変わらず弱く、また、大統領就任後のトランプ氏の政権運営、政策に対する不透明感が強いことである。

 来年1月20日に就任するトランプ次期大統領は、既に環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を明言しており、保護主義的な通商政策が強まる恐れもある。欧州情勢も自国第一主義を掲げる政党が台頭するなど流動的で、こうした海外の政治リスクに対して企業は先行き警戒感を強め、慎重にならざるを得ない。円安傾向もいつまで続くか見極めにくい状況である。

 ただ、経済の基礎的諸条件(ファンダメンタルズ)から見れば、米国の利上げやFRBの政策スタンスもあり、為替相場は趨勢(すうせい)的にはドル高・円安の方向であろう。

 政府は支援を惜しむな

 企業としては、当面は円安などの外部要因を生かしながら、輸出拡大で景況感をさらに改善させ、低調な設備投資や賃金の向上に努めてもらいたい。政府も内需の確実な回復へ政策支援を惜しむべきでない。