参院合区解消、改憲での抜本改革が筋だ
全国知事会は、先の参院選で導入された「合区」によって都道府県ごとの意思が国政に届かなくなるとして、その解消に向けた改憲議論を求めている。
合区は「1票の格差」を是正するためのものだが、数合わせの“改革”はもはや限界だ。改憲論議を通じて合区の弊害の解消だけでなく、参院の存在意義を抜本的に問い直す時だ。
全国知事会が議論求める
先の参院選で、最大約5倍だった格差を是正するため「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区が導入され、約3倍に縮小された。これに対して全国知事会は、投票率の低下や選挙区において自県を代表する議員が出せないなど弊害が少なからず生じているとして、合区解消を求めている。
確かに全国知事会が指摘するように地域の意思形成を図る上で都道府県が果たしてきた役割は大きい。その意思が参院を通じて国政に届けられなくなるのは問題だ。また合区は「緊急避難措置」であり、公職選挙法の付則は抜本的な見直しを規定している。
合区解消を1票の格差を拡大させずに行うには、人口の多い大都市部の定数を増加させるしかない。参院の議員定数を増やすか、比例区の定員を減らし、その分を大都市部の選挙区に回すかのいずれかだ。
だが、わが国は急激な人口減少が予想されており、1票の格差是正の視点だけでは大都市と地方の格差が一層拡大し、多様な地方の意見が国政に反映されなくなる。
では、どうするのか。選挙区選の1票の格差の違憲性が問われなくても済むようにするのが唯一の解決策だ。それで全国知事会は参院議員を「都道府県代表」に位置付ける改憲の検討を要請しているわけだ。
うなずける主張だが、それと同時に参院の在り方をめぐって、かねて改憲論議があったことも想起しておきたい。
世界の多くの国は一院制で、二院制は少数派だ。それには英国型と米国型が存在するが、いずれの参院(上院)も1票の格差は問題にされていない。
英国は世襲貴族や僧侶から成る上院(貴族院)と国民から直接選挙で選ばれた下院(庶民院)の二院制で、下院優位の原則があり、上院は名誉職的存在だ。一方、米国は連邦制に基づく二院制で、上院は人口にかかわりなく各州から2人ずつ選出され、主に安全保障や外交を担い、下院は人口で定数が配分され、内政をメインに扱う。
これに対してわが国は、戦前は英国型だったが、戦後憲法は立憲君主制でありながら華族制度を廃止し、なおかつ明治以来の二院制を継続しようとしたので、衆参いずれも「1票の平等」に基づく選挙で選ばれ、両院の権限も曖昧にされた。
それで同一政党が衆参で多数党であれば参院は衆院のコピーと化し、逆に衆参で多数党が異なれば「ねじれ国会」に陥り、国政が停滞した。こうした現行憲法の弊害こそ直視すべきだ。
「格差」是正だけ論じるな
1票の格差是正だけで参院改革を論じるのは「木を見て森を見ず」の論議に陥りかねない。抜本改革を目指し、改憲論議を深めていく必要がある。