「小池劇場・第2幕」の壮絶バトルが始まると予測するサンデー毎日
◆自己満足の敗戦の弁
やはりこの人の言い訳を聞いておこう。都知事選に野党統一候補として出馬し、政策もない上に、過去の女性スキャンダルまで暴かれて、惨めな敗北を喫したジャーナリスト鳥越俊太郎氏の“弁明”だ。古巣のサンデー毎日(8月14・21日号)に「敗戦独白」をしている。
この中で鳥越氏は、女性問題の影響で浮動票が減ったと言われていることについて、「それはそれで仕方がない。これが選挙なんだから」と淡々とした感想を述べている。「事実無根」「証拠がない」と突っぱね、「選挙妨害」「名誉棄損」で法的措置に出たものの、すべてが明らかにされる前に選挙の決着はついてしまう。選挙とはそういうものだということだけはよく知っていたわけだ。
しかし、数十億円という税金を使って行われる都知事選挙に“政策なし、体力なし、具体策なし”で出て、「段々進化していった」と自己満足に浸られては元を取れない。お一人だけ「勉強になりました」では高くついた勉強会になったものだ。そのご自覚はあるのか。
一つだけ共感した部分がある。「若い記者のアホらしい質問には腹が立ちました」という部分だ。「『これまで戦ってどうですか』ってね。『どうですか』って質問は記者にとって禁句。『もっと考えろ、質問の内容を』って」と苦言を呈している。
中身のない大ざっぱで曖昧な質問をされて、答える側が気を利かして、聞かれてもいないことを答える様子をよく見掛けるが、そこまで「アホらしい質問」に付き合う必要はない。まったく同感である。もっとも、ジャーナリストの先輩がしっかりと質問の仕方を伝授してこなかったツケが自分に回っているだけかもしれないが。
◆晩節を汚させた野党
「自分なりに精いっぱい戦った」という感想は高校の運動部ですらアウトだ。それで満足し喜ぶのは保護者しかいない。「自分なり」の基準がどこに置かれていたかが問題だからだ。自分に甘ければ低い目標、厳しければ高い目標を設定しただろう。“とりあえず出馬して、選挙分からないけど、精いっぱいやりました”という程度の姿勢で首長選挙に出るものではない。
責任が最も大きいのは担ぎ出した野党である。鳥越氏にジャーナリストとして優れたところがあるのであれば、その晩節を汚させたのは民進党ら野党だからだ。結果論で言えば、小池氏圧勝を助けたのは“自民党都連”と“野党共闘”だったということになる。
その小池百合子新都知事、前途は多難だと週刊誌各誌は書く。サンデー毎日は小池氏を待ち受ける「伏魔殿・東京都庁」には「スウェーデンの国家予算と同じ規模」の一般会計を持ち、地方自治体にもかかわらず「都庁“官僚”」と呼ばれる結束の強い職員が、「トップの知事には誰が来ても関係ない」とうそぶいて待ち構えている。「『小池劇場・第2幕』の壮絶バトル」が始まると予測する。
◆早くも敵役が明白に
以前から、「都議会のドン」こと内田茂都議の「黒歴史」を書いている週刊文春(8月11・18日号)は引き続き「東京五輪の利権」疑惑に焦点を当て、新知事の下でそれらにメスが入るのかどうかに注目する。
選挙期間中「都議会冒頭解散」と挑戦状を突き付けてきた小池氏だが、制度的に無理があり、議会と「あっさり妥協する」可能性もあると書く。しかし、就任のあいさつ回りで素っ気ない対応をした自民党が早くもメディアで“悪役”に仕立てられ、“小池第2劇場”の敵役は早くもくっきりした感じだ。同誌には今後も「五輪利権疑惑」追及を続けてもらいたい。
週刊新潮(8月11・18日号)は「女帝」小池知事が「蹴散らす標的1番から5番まで」と、他誌にはない切り口の記事だ。圧勝小池知事にとっての標的の1番が前出の内田都議、2番が石原伸晃前自民党都連会長、3が森喜朗五輪組織委員会会長、4が都議会、そして5番目が官邸・党となっている。これらを「蹴散らす」というのだから穏やかではない。
「女帝」といい「小池劇場」といい、あおり立てているのは週刊誌ばかり。「300万票になんなんとする票」の後押しがあるとはいえ、そんな大戦がやすやすとできるわけがない。「大きな妥協」も政治の一つ。まずはしばらく見守ろう。
(岩崎 哲)