施政方針、日本の未来開く「挑戦」を


 通常国会で安倍晋三首相は施政方針演説を行い、経済成長、少子高齢化、厳しい安全保障環境などの懸案に「挑戦」し、答えを出すことを強調した。デフレからの脱却は道半ばであり、人口減少および中国の海洋進出や力による現状変更の試み、北朝鮮の「水爆」実験などは極めて深刻だ。

 「どうにかなる」ではなく「どうにかする」と訴えた首相の決意に期待したい。

 「1億総活躍」を掲げる

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衆院本会議で施政方針演説を行う安倍晋三首相=22日午後、国会内

 施政方針は、アベノミクス第2ステージの名目国内総生産(GDP)600兆円を目指す経済成長、希望出生率1・8の実現のための子育て支援、介護離職ゼロに向けた社会保障――の「新3本の矢」について強調する内容だった。これら困難な課題への挑戦を宣言したわけだが、具体的な政策は走りながら考えるものになろう。

 演説では「地方創生への挑戦」「1億総活躍への挑戦」「より良い世界への挑戦」を掲げ、これらの諸課題にイノベーション型の取り組みをすることを重要視した。だが、こうした挑戦は従来の日本社会における通念や制度、組織のあり方を大きく変革しなければならないため試練を伴うものだ。

 強い経済のためのイノベーションは言うまでもないが、「1億総活躍」を掲げる首相は「多様な働き方が可能な社会」という新機軸を打ち出して雇用形態に大きな変革を迫っている。労働人口が減少する中で、従来の定年制度ではなく高齢者が「いつまでも元気で」働けるような「生涯現役社会」を打ち出したのは有効な手立てである。

 が、「マタハラ」防止、男性の育児休暇取得拡大、フレックスタイム制度、時間でなく成果で評価する賃金体系、正社員と派遣社員らとの「同一労働同一賃金」などを実現するには、企業側に相応の努力が不可欠だ。営利に走る企業側に促していくには、きめ細かい対策がいる。

 超高齢化の時代に、介護離職ゼロの目標達成には新たな社会保障制度の導入と予算措置が必要だ。希望出生率1・8についても同様で、大家族による支え合い、ひとり親家庭、仕事をしながらの子育てへの支援が求められる。

 幸い、首相は「アベノミクスの果実」として名目GDPが28兆円、国民総所得が40兆円近く、来年度予算の税収が15兆円増加したことを報告できた。経済成長なくして「地方創生」も「総活躍」も実現は難しい。

 この経済成長のため、環太平洋連携協定(TPP)を積極的に活用することを首相は演説で示している。地方農家の不安は大きいが、「攻めの農業」で農産物輸出1兆円という目標を超えていくには、“第2の農業改革”を行う覚悟がいるだろう。

 改憲に向けた議論を

 外交では日米同盟を重視し、沖縄の米軍基地負担の軽減に全力で取り組む決意を示した。普天間基地の辺野古移設も負担軽減に繋(つな)がるとの訴えが、沖縄で理解を得られるようにしなければならない。

 また、憲法改正、選挙制度改革について首相の呼び掛け通りに国会での議論を通じて成果を出すべきだ。

(1月23日付社説)