民主党は社会党の轍を踏むな
来年の参院選をにらみ安倍晋三首相と会談した橋下徹前大阪市長が憲法改正を求める一方、民主党など野党は憲法9条改正阻止を掲げ、改憲の是非を争点とする構えだ。
民主党は「創憲」を展望していたが、これでは戦後長らく「護憲平和主義」を標榜し政府・自民党と頑迷に対決し続けて衰退した旧社会党の失敗を繰り返すことになる。
参院選目標は発議阻止
民主党の岡田克也代表は地方講演やマスコミの取材に対し、来年の参院選の目標として与党やおおさか維新の会などに改憲発議に必要な3分の2の議席を与えないことを挙げている。改憲阻止を掲げることは、共産党が安全保障関連法廃棄のために提案した「国民連合政府」構想とも連動し、選挙支援を得るためでもあろう。
岡田氏は山形県内で開かれた同党の時局講演会で「安倍総理が目指しているのは自民党の憲法改正草案にあるように憲法9条を改正して限定なしの集団的自衛権の行使を可能にすること。来年夏の参院選挙で与党が3分の2の議席を獲得すれば、国民の理解を得られたとして憲法改正という流れになる。今、日本の将来を決める大きな転換点にある」(同党HP)と述べた。
しかし、民主党も以前は「創憲」を打ち出して改憲を展望していたのではなかったのか。2004年の同党憲法調査会中間報告では9条の原則を維持しながら「国際協調主義に立った安全保障の枠組みの確立を」と訴え、集団安全保障、制約された自衛権などを条文に位置付けることを提案していた。
政権を失って再び野党になってから定めた現在の綱領では、護憲的色彩を強めた文言であっても「国民とともに未来志向の憲法を構想していく」の一文を残している。これら中間報告、綱領に基づいて具体的な改正条文案を示し、対案を提起していくことが責任政党の姿だ。
安全保障関連法の審議においても民主党は対案を示すべきだったが、反対に偏した運動に呑まれてしまった。反安保法制で共闘を主導した共産党は改憲阻止と同法廃止が「対案」と言い張る。また、学生らの反安保法制デモを組織した「シールズ」が同法廃棄を掲げる候補者を支持する「市民連合」を結成したことを岡田代表は歓迎した。
民主党が改憲をめぐって対案を示すことなく、共産党や市民連合から参院選で支援を受ければ、その圧力から9条改正反対の護憲の殻に閉じこもり、改憲案を策定する論議に容易には舵を切れなくなる。
また、かつての「政権交代」の標語も今では魅力が失われ、改憲阻止のため与党に3分の2の議席を取らせないという目標では、旧社会党が歩んだ万年野党の轍を踏むことになる。
対案の提出に努めよ
結党60年を迎えた自民党は2回野党になったが、これは不祥事で政治不信を招いたことによるもので、安保政策で政権を失ったことはない。
民主党は憲法9条問題で共産党との共闘ではなく改正案対案の提出に努め、国権の最高機関で改憲論議に影響を与えることを考えるべきだ。
(12月24日付社説)