普天間移設作業の進展を歓迎

在沖米国総領事 ジョエル・エレンライク氏に聞く

在沖米軍の影響を軽減

辺野古以外に選択肢なし

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沖への移設をめぐり、国と沖縄県の対立が法廷闘争に発展した。同飛行場の移設や在日米軍再編計画の意義や沖縄県に対する期待など、在沖米国総領事館のジョエル・エレンライク総領事に聞いた。(那覇支局・豊田 剛)

地元との交流に努力

普天間移設作業の進展を歓迎

 ――沖縄に米軍基地があることの意味は何か。

 在日米軍基地は日本と米国の安全のために駐留し、日米同盟の責務を果たしている。相互の防衛だけでなく、地域の安全と安定をもたらす役割がある。

 米国はアジア太平洋地域には日本以外にもたくさんの同盟国、パートナー国がある。日本との関係はアジア地域へのリバランスの一つで、アジア太平洋地域への責務を示すものだ。

 ――アジア太平洋地域の安全保障の現状をどう見るか。

 オバマ大統領はアジアへのリバランスについて発言してきた。地域で起こることに即座に対応できるよう準備している。それは軍事面だけでなく、自然災害でもそうだ。在沖米軍を、福島、フィリピン、ネパールで発生した災害に迅速に派遣し、何万もの命を救い、何十万の人々の復興をお手伝いすることができた。

普天間移設作業の進展を歓迎

米軍人軍属らから大歓迎を受けるスペシャルオリンピックスの参加者=11月7日、米空軍嘉手納基地(嘉手納町)

 ――普天間飛行場を移設する意義は。

 普天間飛行場がキャンプ・シュワブの既存基地に移設するための作業が進展していることを歓迎する。日本政府が日米合意の責任を果たしていることを歓迎する。

 米軍再編計画は整理縮小計画、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)の最終報告、そして2012年の共同声明に基づくもので、在沖米軍の影響を軽減するためのものだ。その中で、普天間飛行場を閉鎖すべきだということに誰も異論はない。

 最終的には嘉手納基地以南の米軍施設の3分の2が返還される。さらに、キャンプ・キンザーの返還、北部訓練場(東村と国頭村)9000エーカー(約36平方㌔㍍)が返還される。これは沖縄の復帰以来、最大規模の土地返還となる。再編に伴い、海兵隊員の約半数が削減される。沖縄への影響を削減する計画があるということだ。

 ――米政府には辺野古案以外を考える用意はあるのか。

 これ以外に選択肢はない。日米両政府はずっと一貫している。

 ――地元の基地反対派は日本政府と沖縄の対立について「米国は傍観している」と批判している。反対派とはどのような対話が期待できるか。

 すべての沖縄県民の意見を尊重する。米軍のプレゼンスを受け入れる人とも受け入れない人とも対話してきた。米国人としてさまざまな意見や抗議する権利を尊重する。

 しかし、沖縄の基地の影響軽減という進行中の計画を前に進めたいのが米国の考えだ。沖縄の方々への影響を削減し、最終的には将来、より強い同盟関係を築き、地域の安全に役立ちたい。

 ――沖縄と米国との友好関係の現状はどうか。

 米軍についてはメディアを通じてネガティブな部分だけが注目され、沖縄と米国の友好関係については十分に伝わっていない。毎日、あるいは、毎週のように、子供たちに英語を教えたり、一緒にスポーツをしたり、児童養護施設を訪問したりしている。11月7日、嘉手納基地でスペシャルオリンピックス(知的障害者のためのスポーツイベント)が開催され、基地内外から約3000人のボランティアが集まった。

 このように沖縄の地域社会に貢献し、良き隣人であるよう努力している。こうしたことをもっと多くの方々に分かっていただければと思っている。

 軍の幹部は皆、沖縄の温かい歓迎に感謝していることを付け加えておきたい。

 ――沖縄を含めた日本と米国の関係を今後、どのように強化していくつもりか。

 先月、キャロライン・ケネディ駐日大使が沖縄を訪問した際、アメリカと沖縄にはたくさん共通していることがあると述べた。将来の世代のために我々は絆を結ぶべきだという話だった。観光、経済、学者、学生などの分野で人的交流を促進していきたい。

 日米関係において深刻で重要なテーマの一つとして基地問題があるが、これは真剣に取り組まなければならない重要な問題だ。しかし、同時に、ごく少数の人々はお互いの違いのみに注目しているが、その相違の解決を図りながらも、そのほかにもたくさんの共通した機会があると思う。


ジョエル・エレンライク

 1981年にアイオワ州のドレーク大学で経営学士を取得。ニューデリーと東京の大使館で政治担当官を務めた後、シドニー、ロメ(トーゴ)大使館を歴任。フィリピンのマニラ大使館経済担当公使を経て現職。駐日米国大使館外務局職員の妻との間に息子が2人いる。趣味は野球観戦。