駐沖縄米総領事インタビューを共同が配信し沖縄紙が叩く反米共闘
◆偏向が疑われる共同
新聞とりわけ地方紙の「裏方の役割」を果たしているのが共同通信だ。一般企業でなく、公益法人である。全国の新聞社やNHK、民間放送局が「加盟社」となり運営されている。ニュースだけでなく論説や小説なども配信し、共同通信がなければ、地方紙の新聞作りは立ちどころに行き詰まってしまう。日本特有のメディア構造とされる。
かつて筆者が整理記者だった頃、先輩記者から「通信モノには旗がない。ニュースバリュー(価値付け)は紙(新聞)がしっかり下せ」との指摘を受けた。通信記事は事実を淡々と書き、中立的で旗幟を鮮明にしない。その羅列ではメリハリがなく、紙面が作れないというわけだ。
だが、昨今の共同通信はどうだろうか。「本来、各社が独自に持つ編集方針にしたがって判断すべきニュースの価値づけ、軽重を決定づけるキャスティングボードを共同通信が握っている面がある」(安藤慶太・産経編集委員=「誰も書かなかった『反日』地方紙の正体」日下公人編集=産経新聞出版)。その傾向が強まり、一部新聞と結託するかのような報道も見受けられる。
沖縄紙がそうだ。琉球新報は14日付1面トップに「反対民意『小さな問題』 辺野古で沖縄米総領事」との見出しで、ジョエル・エレンライク駐沖縄米総領事のインタビュー記事を掲載した。沖縄タイムスも同1面肩で「反対民意『ささいな問題』」と大きく報じた。いずれも共同の配信記事だ。
◆真意ねじ曲げる扱い
それによると、同総領事は共同の単独インタビューに応じ、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の辺野古移設反対の民意について「非常に重要で深刻な問題だが、基地負担を軽減し、日米同盟を強化する在日米軍再編計画の中では小さな問題(one small part)にすぎない」との見解を示した。
記事は「沖縄の基地問題に深く関わる米政府担当者が、地元民意を軽視した発言として批判を呼ぶ可能性がある」と、問題発言としている。だが、読み進むとこうある。
「『小さな問題』との発言について記者が真意を確認したのに対し『(地元が反対しているという)問題そのものは小さくない。ただ、日米関係や米国と沖縄の関係を考えれば、部分的なものという趣旨だ』と説明した」
つまり総領事の真意は、地元反対は「小さくない」が、日米同盟の大局と比べれば「小さい」としているにすぎない。ましてや「ささいな問題」とは一言も述べていない。共同記者はその真意を確かめておきながら、「批判を呼ぶ可能性」と、反対をけしかけるかのように書いた。
それを受けての前記の記事である。琉球新報は14日付1面だけでなく、社会面トップで「『植民地主義だ』 民意軽視に県民怒り」と反対活動家らのコメントをずらりと並べ、15日付社説では「発言撤回しお引き取り願う」と辞任要求まで突きつけた。
沖縄タイムスも15日付社説で「民意に謙虚に向き合え」と批判、NGO団体「グリーンピース」のメンバーが辺野古を訪れたとし、反辺野古が国際的に広がっていると論じた。グリーンピースは過激な反捕鯨活動で知られ、「エコテロリズム」と呼ばれるが、こんな団体まで引き合いに出して反辺野古論を張るのだ。
◆お手盛りの抗議報道
両紙の報道を受け、在沖米総領事館前(浦添市)などで抗議集会が開かれ、両紙はそれを大きく報じるマッチポンプの反米キャンペーンに余念がない。だが、抗議集会は「問題発言」で急きょ計画されたわけではない。反辺野古派の県議会与党5会派がその前から準備していたものだという(沖縄タイムス14日付)。
どうやら共同はそのタイミングを計って総領事にインタビューを申し込んだようだ。共同は2011年3月、ケビン・メア米国務省日本部長(当時)の「沖縄はゆすりの名人」発言をスクープしたが、発言は3カ月も前のもので、しかも歪曲されていた。にもかかわらず沖縄紙が騒ぎ立て、メア氏は退職を余儀なくされた。今回、二匹目のドジョウを狙ったのだろうか。
とまれ共同と沖縄紙、反辺野古派の反米共闘の疑いが消せない。それが通信社の「裏方の役割」なら日本のジャーナリズムの危機だ。
(増 記代司)





