連続マイナス成長、「好循環」再生に大型補正を
2015年7~9月期の国内総生産(GDP)は、本紙でも度々(たびたび)懸念していた通り、実質で前期比0・2%減、年率換算では0・8%減で、2期連続のマイナス成長になった。
勢いのない内需に加え、海外経済の不振も重なり、景気は足踏み状態から抜け出せない。今年度補正予算での大型の景気対策が不可欠である。「新3本の矢」の第1の矢、名目GDP600兆円の実現には、予定している17年4月の消費税再増税の見直しも必要である。
昨年の消費増税の悪影響
2期連続のマイナス成長は、消費税増税後の14年4~6月期、同年7~9月期以来である。今回は、昨年の消費税増税の悪影響から立ち直りきらないうちに、海外経済、特に中国経済の減速が響いて、これを背景にした設備投資の減少が成長の足を引っ張ったためである。
甘利明経済財政担当相は会見で「在庫調整の影響を除けば、プラス成長だ。(景気の)基調は悪くはない」と語っている。
確かに、民間在庫の実質GDPへの寄与度はマイナス0・5%で、個人消費は前期比0・5%増と前期(0・6%減)からプラスに転じたが、回復力は十分とは言い難い。2期をならすとほぼ横ばいである。消費税増税や円安による食料品などの値上げが影響して、消費の水準は増税前の13年7~9月期をいまだに下回っている。
設備投資は同1・3%減と前期(1・2%減)に続くマイナスとなった。高水準の収益を得ながらも、企業は中国など海外経済の先行き不透明感から設備投資に積極的になれず、むしろ手控える姿勢を強めているのである。
最近の景気の弱さ、マイナス成長をみるにつけ、悔やまれるのは昨年の消費税増税である。「アベノミクス」当初の3本の矢政策(実質的には大胆な金融緩和と積極財政)により、円安・株高を起点に経済の好循環が始まって景気は日増しに拡大基調を強めていった。しかし、デフレ脱却途上の早過ぎた消費税増税がものの見事に好循環を断ち切ってしまったのである。
いまだに消費、設備投資、輸出に景気回復・拡大の牽引(けんいん)力が見られない中で、好循環をどうやって回復させるか。2期連続のマイナス成長を受け、安倍晋三首相は景気対策のため15年度補正予算案の編成作業に着手する意向を表明したが、当然である。7~9月期の名目GDPが年率0・1%増では、「名目GDP600兆円」の達成はとても覚束(おぼつか)ないからである。
政府・与党はもともと、環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受けた国内農業対策や「1億総活躍社会」の緊急対策などのために、3兆円以上の補正予算を検討中である。景気下支え策では家計支援策が柱になるという。
5兆円以上の補正予算を
「好循環」再生には相応のインパクトのある消費刺激、投資誘導策が必要である。5兆円以上の大型の補正予算編成が求められよう。
そして、その効果を削(そ)がないためにも、17年4月に予定している消費税再増税の是非も問われるべきだ。
(11月18日付社説)