1ウォンの価値
韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」
直径17・20㍉、0・729㌘の銀白色の硬貨。他ならぬ1ウォンだ。市中に流通する効果の中で価値が一番低い。表には満開の無窮花(ムクゲ)模様が刻まれている。アルミニウムで造られ、風で吹き飛ばされるほど軽い。1966年8月に誕生した1ウォン硬貨は銅と亜鉛を混ぜて作った。それで色も旧10ウォン硬貨のように黄金色だった。1968年8月に材質がアルミニウムに変わって現在のように銀白色になった。
物価が上昇して1ウォン硬貨の価値はほとんどなくなった。市中では1ウォンはおろか5ウォン硬貨もなかなか見かけない。道端に落ちた1ウォン硬貨を見てもそのまま通り過ぎる世の中だ。それくらいつまらなく見えるが、物価を考慮すると1966年8月の1ウォンは今の3ウォンの価値があった。1ウォン硬貨を1枚つくるのに254ウォンかかるともいわれている。数年前までをみても、銀行で電気代や水道代を払うと1ウォン硬貨でおつりをくれた。今は銀行が損をしても10ウォン以下のおつりは出さなくなった。1ウォン受け取るところは10ウォンだけもらい、11ウォン返す時には20ウォンを渡すという具合だ。硬貨としての機能を果たせなくなって、5ウォン硬貨と共に消え去る運命にある。1ウォン硬貨は2004年12月からミントセット用に造るだけで、既に発行はされていない。
1ウォンは現在、実際のお金の価値を離れて象徴的な意味で使われることが多い。企業のCEOは痛恨のリストラを強調するため、自ら「年俸1ウォン」だとか「ストックオプション1ウォン」と宣言したりする。建設の受注や医薬品の納品などで市場を先取りするため、公開競争入札で象徴的な金額として1ウォンと書いたりもする。韓国動乱で破壊された漢江大橋の復旧工事が1ウォン(今のウォン)で落札されたのは有名な話だ。
一昨日、国防部(部は省に相当)の受信用携帯電話事業者を選定する入札で、LGユープラスが1ウォンと書いて落札された。兵士8~10人が生活する宿舎ごとに携帯電話を設置する事業だ。息子を軍隊に送った父母たちが部隊の日課後の時間に息子と通話できるようにするためだ。父母たちの心配がひとしお軽くなり、兵士たちは心理的にいっそう安定するものと期待される。LGユープラスは最近、北朝鮮の木箱地雷の挑発による国家的危機の状況の下、除隊まで先延ばしした兵士たちの話に感銘を受け、このように決定したのだとか。LG側は通信料金を含めて141億ウォンのサービスも無償で提供するという。このように価値のある、感動を与える1ウォン落札が他にあるだろうか。
(9月5日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。