世論調査の政治
韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」
電話による世論調査のアルバイトをしたことがある。主に政治、社会の懸案に対する賛否を問うものだったが、日当がかなりよかったので同じ学科の女子大生に人気があった。ただ、守るべき条件があった。どこでどんなことをしたのかを外部に漏らしてはならないということだった。私たちは“韓国社会研究所”のような社会団体の依頼で調査していると回答者たちに説明したが、実際は文化観光部(部は省に相当)の調査だった。当時は政府の調査だというと、質問に答える人もいないし、率直な回答を聞くことも難しい時代だった。
今も青瓦台(大統領官邸)、政府には国政に関する世論調査を担当する部署があるが、“女子大生アルバイト”の代わりに専門の世論調査機関を活用している。ウィキリークスが暴露した駐韓米大使館の国務省機密報告書のうち、趙龍休(チョヨンヒュ)・青瓦台世論調査秘書官との面談内容を見ると、盧武鉉政府における世論調査の政治がうかがわれる。韓米自由貿易協定(FTA)、イラク派兵、戦時作戦権返還などの懸案について多くの調査を実施して予算が足らなくなるほどだったという。金大中大統領の下で同じような仕事を担当した趙秘書官は、金、盧両大統領の違いを問う質問に対し、「金大統領は関連政策を変える方式で否定的な世論調査情報に対応するが、盧大統領は世論調査結果を自分に対する世論として内面化する傾向があり、常に最近の統計に敏感だった」と語ったという。
世論調査に敏感なのは汝矣島(ヨイド)(国会議事堂があるソウルの地名、日本の永田町に相当)の政界も同じだ。立候補者一本化の尺度として活用され、公認・推薦の決定にも少なからず影響を及ぼすためだ。定期的な政治世論調査で欠かせないのが、大統領の職務遂行評価と(次期)大統領候補の支持率だ。大統領の職務遂行評価は、大統領の支持率とみなされ、その上昇・下降によって青瓦台の雰囲気が変わる。次期大統領候補の支持率は政党内の力関係、政治家のブランドという側面で意味を持つ。
最近、ある世論調査で国会法改正案に朴槿恵大統領が拒否権を発動した際、朴大統領と正面衝突した劉承●(ユスンミン)前セヌリ党院内代表が金武星(キムムソン)同党代表を抜いて、次期大統領候補の1位になったという。劉前院内代表(19・2%)と金代表(18・8%)の支持率の差が0・4ポイントなので誤差範囲(95%信頼水準で±3・1ポイント)を考えると、実際は順位を付けられないぐらいの差だ。世論調査の政治にバブルがつきものだということは、これまでの調査で急浮上して消え去った無数の政治家たちが物語っている。“世論調査の父”ジョージ・ギャラップも世論調査を単純な“スナップ写真”だといっているではないか。
(7月13日付)
●=日へんに文
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。