通常国会延長、国民と国のため必要な立法を


 通常国会の会期が延長され、9月27日までの長丁場の論戦が行われようとしている。安倍政権が大幅に延長したのは懸案の安全保障関連法案の成立を目指す一念からだが、これまで不毛の対立が続くことが多かった安保問題に実りある議論を加えて成立させてもらいたい。

野党は安保法案を批判

 集団的自衛権行使の一部容認を伴う安保関連法案をめぐっては、民主党や共産党の「安倍政権の暴走を許すな」といった扇情的な主張がみられ、戦争に巻き込まれるかのような宣伝がなされている。

 こうして政権に打撃を与えようとするのは、選挙で敗退を繰り返してきた民主党としては党勢の回復、民主党の低迷により批判票が流れ込んだ共産党は党勢拡大のチャンスとしたいからに他ならない。

 法案に反対する野党側は、自衛隊の「海外活動に歯止めが掛からない」と繰り返す。しかし、これまで自衛隊が海外派遣された際の装備、武力行使が認められる新3要件に照らせば、後方支援で万が一戦闘に巻き込まれる不測の事態があったとしても、派遣部隊は撤収するためにやむを得ず応戦するのであって歯止めは掛かる。戦力投入するような泥沼化はあり得ない。

 これまで自衛隊がイラク復興などで装備した武器も小銃や対戦車榴弾砲など隊員が携行できるものだ。後方支援のために派遣された地域で「現に戦闘が行われる」前に撤収するのが鉄則だが、リスクがあるから武器を携行するのであり、武器使用はリスク回避のための必要最小限とされている。

 集団的自衛権行使の一部容認について、衆院憲法審査会で憲法学者が違憲との認識を示したことにより、野党側が勢いづいて攻勢をかけている。だが、違憲か合憲かの最終的な判断は憲法81条に最高裁判所が行うと明記してある。

 政府・与党は最高裁が自衛権について唯一の判断を示した砂川事件判決を行使容認の根拠としている。野党側は同裁判が米軍駐留をめぐる事件について争われたもので、根拠にはならないと指摘している。

 しかし、そうとは言い切れないだろう。この判決では国家の行為のうち高度な政治性を持つものは司法審査の対象にはならないという統治行為論が用いられた。

 集団的自衛権の行使は認められないとする1972年の政府見解は、その後に出てきたものだ。自衛権は国の自然権であり、個別的であれ集団的であれ、認める程度は変わり得る。

 与党は今回の会期延長で、法案が参院に送付されて60日たっても議決しなければ「否決」とみなし、衆院で再可決できる憲法の「60日ルール」の適用も視野に入れている。野党や護憲派の学者らは法案成立後の違憲訴訟の準備をしている。

与党はひるまず結束を

 真に国と国民の命を守るために必要ならば、自民・公明の与党はひるむことなく結束して、議論を深めながら法整備に努めてほしい。

 万が一将来、最高裁が違憲判断するのであれば憲法改正に全力を挙げて取り組むべきだ。

(6月25日付社説)