中国のASEAN分断外交 タイから
地球だより
中国の李克強首相は今月中旬、ブルネイで開催された東アジア・サミットに出席後、ベトナムやタイを訪問した。また習近平国家主席も今月初旬、初めてインドネシアとマレーシアを訪問し、協力関係強化で合意した。アジア回帰をうたいながら東アジア・サミットを欠席したオバマ米大統領の間隙を突く格好で、中国は国家を挙げて東南アジア諸国連合(ASEAN)外交強化に動いた格好だ。
バンコクを訪問した李首相は、インラック首相らと会談したほか、タイ国会で演説。李首相は同演説で、両国関係を「親戚付き合い」に例えて良好で親密な関係を強調してみせた。また李首相は、今後5年でタイからコメ100万トンを輸入すると表明したほか、タイの高速鉄道整備事業への参入に期待を示した。その後の首脳会談では、相互に短期滞在のビザを免除し、青島、プーケットに領事館を開設する方向で検討することでも一致した。
ともあれ中国のASEAN取り込み外交は熱を帯びている。ベトナムを訪問した李首相は、ハノイでグエン・タン・ズン首相と会談。経済協力に関する合意文書に署名したほか、領有権を争う南シナ海問題や自由航行問題でも2国間の交渉をベースとするとした中国側の提案をのませることにも成功した。
その意味では南沙諸島の領有権問題で国際司法裁判所に提訴したフィリピンを孤立させるという中国の思惑は成功しつつあるかに見えるほどだ。
だが、ASEANは意外としぶとい。とりわけインドシナ半島での共産主義によるドミノ倒しを警戒することで発足した経緯のあるASEANの対中警戒感は根強いものがある。オバマ大統領と安倍首相のリベンジが願われる。
(T)