テトとお年玉
地球だより
中国に春節があるように、ベトナムではテト(旧正月)がある。
ベトナムでは毎年テトが近づくと、お寺にお参りする際のお賽銭(さいせん)や親族縁者の子供たちなどに配るお年玉などに使用するための新札の少額紙幣の需要が急増する。銀行は毎年、VIP客を引き止めるためのサービスとして、少額の新札紙幣を大量に用意している。わが国で年末に顧客に配るカレンダーサービスのような感覚だ。
ただ行員らへのしわ寄せは並大抵のものではない。銀行のお得意様からのご用立てだけでなく、親戚や友人に至るまで両替を頼まれるからだ。ただでさえテト前の仕事整理が山積みなのに、別件の要求に応えるため大忙しとなる。
ある行員は1日に10億ドン(約560万円)を超える両替をすることもあるという。
1990年代、ホーチミン市の銀行に行った時、トラックの荷台に米俵のような麻袋をボンボン積み込んでいる風景を目にしたことがある。ベトナムで働く友人の話によると、給料支払いのための資金だということで、月末に恒例の風物詩だということだった。
当時、ソ連崩壊の渦に巻き込まれるようにして経済的苦境にあったベトナムでは、まだ高額紙幣がなく往年の紙幣体系でインフレ経済を生き延びなければならず、そうした光景も見られたが、お年玉ニーズが急増するテト前にはこうしたかつての風物詩が復活する。
(T)