各党代表質問、経済成長と安保議論を深めよ
衆院本会議で安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が行われ、通常国会の本格的な論戦が始まった。
厳しい内外情勢の下で「改革断行国会」と銘打つ安倍内閣を相手に、我が国のデフレ脱却を達成するための経済成長と、中国や中東の過激派組織など高まる脅威に対処するための安全保障政策について議論を深めてほしい。
民主代表が格差批判
代表質問で注目されたのは、党首交代となった野党第1党の民主党・岡田克也代表だったが、「格差と分配」に主眼を置く質問内容は、10年前の野党時代からの繰り返しである。
ただ、当時の小泉純一郎政権を相手に格差批判を行い支持を広げた時代と違い、民主党は1度政権を経験している。「分配」の前提となる経済成長に向けて具体策を掲げ建設的な論戦を挑んでほしい。安倍内閣の経済政策・アベノミクスも第3の矢と称される成長戦略で正念場を迎えている。
景気回復が遅れているのは、昨年4月の消費税増税の影響が大きい。増税は民主党政権下で決定されたものであり、その意味では責任の一端があることを自覚すべきだ。
民主党政権時代の「分配」策は「子ども手当」や農家への「戸別所得補償」など行政による税金を使っての家計補助だった。だが、本来は景気回復によって賃金が上昇し、雇用情勢が好転することが望ましい。
維新の党の江田憲司代表は、自民党に規制改革はできないと断じた。最高顧問の橋下徹大阪市長が府知事時代に行った府議会議員の定数削減、報酬カットに触れたが、国会議員の身を切る改革の在り方に一石を投じたと言える。
一方、岡田氏が戦後70年首相談話に「村山談話」の「植民地支配」「侵略」などの言葉を含めることを求めたのは、村山富市内閣当時の与党・社会党の流れを汲む民主党の事情を印象付けるものだった。
戦後70年の現在、日本では戦争を経験したことのない世代が殆んどである。平和を希求する国民の真意を未来に伝えることが大切であり、いたずらに「侵略者の子孫」を自称すればよいものではない。
憲法改正について自民党の谷垣禎一幹事長が質問したのに対し、首相は「しっかりと着実に取り組んでいく」と答弁した。国民投票法が昨年改正されたことで、改憲は具体的に政治日程に乗せることができる課題となった。
昨年7月の集団的自衛権行使の一部容認をめぐる閣議決定を前に「憲法改正が筋だ」と主張した野党側こそが積極的に改憲を提起していくべきだろう。
不毛な論争繰り返すな
同閣議決定を受けた安全保障関連法制の整備も今国会中に議論となるが、「イスラム国」により邦人人質が殺害された映像が公開され、中東の不安定化やテロが懸念されている。在留邦人はもちろん、日本にとって死活問題である原油輸送路の安全確保のために喫緊の課題だ。憲法に起因する不毛な安保論争を繰り返していては、国際社会からの信頼も得られない。
(2月17日付社説)