デンマーク銃撃、国際連携でテロ拡散許すな


 デンマークの首都コペンハーゲンで、イスラム教の冒涜(ぼうとく)と言論の自由に関する討論会の会場に向けた銃撃があり、55歳の男性1人が死亡、警官3人が負傷した。

 犯行の背景は明らかではないが、犯人がイスラム過激思想に影響された可能性もある。国際社会は連携してテロの拡散を防がなければならない。

 漫画家殺害が狙いか

 犯人は目出し帽をかぶり、会場の外から40発近い弾丸を撃ち込んで車で逃走した。翌日未明には市内のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)付近でも銃撃事件があり、警備員のユダヤ人男性1人が死亡、2人が負傷した。

 この数時間後、市内で警官に発砲してきた男が射殺された。警察当局は現場のビデオ映像から、この男が両事件の犯人だとの見方を示している。

 討論会には、2007年にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を描いて物議を醸したスウェーデン人漫画家ラーシュ・ビルクス氏やフランス大使が出席していたが、いずれも無事だった。銃撃はビルクス氏が標的だったとみられ、トーニングシュミット首相は「デンマークに対するテロだ」と非難した。

 ビルクス氏は風刺画掲載後、幾度となく殺害の脅迫を受け、警察が24時間監視する厳重な保護下で暮らしていた。イスラム過激組織は殺害した者に10万㌦(約1180万円)の報奨金を与えるとの声明を出していたとされる。

 今回の事件が、過激思想の影響でビルクス氏を狙ったものだとすれば、表現の自由を暴力で踏みにじるものであって決して許されない。

 今年1月にはフランスで、ムハンマドの風刺画を掲載した週刊紙シャルリエブドの本社が銃撃され、12人が死亡する事件が起きたばかりだ。国際社会は情報共有などで連携し、卑劣なテロの封じ込めに全力を挙げる必要がある。

 一方、表現の自由を盾に宗教を冒涜するかのような風刺画を公表することには疑問が残る。シャルリエブドは銃撃事件後の特別号の表紙にムハンマドの風刺画を掲載してイスラム教徒の反発を招いた。

 表現の自由は保障されなければならないが、彼らの心を傷付けるような風刺画を描くべきではあるまい。

 過激組織「イスラム国」などの影響で、先進国の若者が自国を攻撃対象とする「国産テロ」が国際社会の懸念材料となっている。

 米機関によれば、「イスラム国」が勢力を伸ばしているシリアに渡航した外国人戦闘員は90カ国以上から2万人以上に達し、少なくとも3400人が西側出身者だ。彼らが帰国してテロを引き起こす恐れもある。

 考えられる限りの対策を

 「イスラム国」が日本人をテロの標的にすると宣言したことを受け、政府はテロリストの侵入防止や国内のテロ対策強化を進めている。

 警視庁は爆発物の原料などを扱う民間事業者とも連携し、不審者情報の収集を一段と強化している。考えられる限りの対策を講じてテロを未然に防ぐ必要がある。

(2月16日付社説)