開発協力大綱、日本の国益念頭に援助せよ
政府が従来の「政府開発援助(ODA)大綱」に代わる「開発協力大綱」を決定した。旧大綱と違って、対外援助を国益確保の一手段として活用する姿勢を打ち出しているのが特徴だ。これを非難する向きもあるが、他の主要諸国と同様の視点であり、支持する。
外国軍の活動も対象に
わが国では軍事力による国家防衛よりも、経済力活用を主とした総合安全保障論が幅広く支持されてきた。かつては長らく世界一の政府開発援助国の地位を保っていたこともあった。
だが、ODAのほとんどは紐のつかない無償援助や、経済的見返りを期待した紐付き援助ばかりであり、日本の安全確保にはさほど役立っていなかった。国益を念頭に置いた紐付きODAでなければ、国家安全保障の一助とならないからだ。
新大綱は、安倍晋三首相の積極的平和主義を踏まえ、「国際社会の平和と安定および繁栄の確保に、より一層積極的に貢献することを目的として開発協力を推進する」と掲げた。また、こうした取り組みを通じ「国益の確保に貢献する」とした。
そして軍隊による民生目的、災害援助等の非軍事目的の活動について「その実質的意義に着目して」援助する方針を打ち出している。この点が一部で「軍事支援に道を開く」として非難されている。
だが、長期間にわたって実施してきた巨額の対中国ODAは、結果として中国の軍事大国化を招いた。本来、中国が自己の国家予算で構築すべきインフラ整備に関しても、経費の多くを日本が負担したことで、その余力を専ら軍事力拡大に投入することが可能になったからだ。
その結果、今日見られるように日本や東南アジア諸国に大きな軍事的脅威を与えている。今回、新大綱を糾弾している勢力は、かつて対中ODA推進に尽力し、その経済発展が軌道に乗った後もODA打ち切りに反対してきた。その反省は全くないようだ。
新大綱でも、依然として「軍事的用途および国際紛争助長への使用を回避する」と強調している。
しかし、例えばインドネシア海軍整備援助等はこの点に該当するだろうが、日本の国益、安全保障への寄与は大きい。
また、その紛争がどのような原因で発生し、それが日本にどの程度のダメージを与えているかを念頭に置けば、一般的にODAの使用を避けてよいかどうか、大いに疑問だ。
フィリピン、ベトナムは中国海軍の領土拡大策により大きな被害を受けているが、両国海軍力整備への協力は日本の国益に大きく資する。
経済力活用で安全確保を
大国として発展途上国への無償援助は必要と言うだけでなく、それは義務ですらある。だが、国家の安全を確保する手段は防衛力、情報コントロール能力だけでなく、経済力の活用も不可欠である。
その意味で、対外援助は軍事に関わるか否かではなく、援助国にどのような影響を与え、日本の国益にどのような結果をもたらすかを念頭に置いて実施すべきである。
(2月15日付社説)