海外でも多発する子宮頸がんワクチン副反応を追った「NEWS23」
◆推進派の主張を覆す
重篤な副反応とみられる症例が予想を超えて多く発生していることから、接種の積極的勧奨が一時中止されている子宮頸(けい)がんワクチン問題で、12日放送のTBS「NEWS23」が海外の実態を放送した。
このワクチンは世界50カ国以上で国の制度で接種されている。そこで、わが国の接種推進派は副反応で騒いでいるのは日本だけで他の国では問題になっていない、「安全に問題ない」との世界保健機関(WHO)の“お墨付き”もあるとして接種の勧奨を再開するよう求めている。しかし、デンマークの実情を取材して放送した同番組は、重篤な副反応を訴えているのは日本の少女たちに限った問題でないことを示し、推進派の主張を覆すほどのインパクトがあった。
デンマークは2009年から12歳以上の少女に接種を勧め、これまでに約50万人が接種した。番組は2年前にワクチン接種した後、発熱、歩行障害、激痛、記憶障害、失神などで苦しみ、通学できないでいる少女(14)を中心に紹介した。
朝起きても思うように体を動かすことができない少女の姿は、NHKEテレ「ハートネットTV」(昨年12月16日放送)など、ワクチンの副反応問題を扱ったテレビ番組が映し出した日本の少女たちの苦しみと同様のものだった。
昨年、筆者がインタビューした全国子宮頸がんワクチン全国被害者連絡会事務局長の池田利恵さんは、副反応を訴える少女たちが病院で診察を受けても、医師からは「まずワクチンが原因だと考えることをやめることから始めよう」「ただの成長痛だ」と言われ、信じてもらえないでいることに憤っている、と語った。デンマークの少女を担当する医師からも、これと同じ状況を明らかにした。同国でも「(副反応であることが)信じてもらえない。患者であることは想像以上に大変」というのである。
◆導入の疑問を深める
副反応を訴える患者を多く診察する東京医科大学の西岡久寿樹教授がデンマークを訪れて、地元の医師とともに調査した結果、自律神経障害、記憶障害など、ワクチンを接種したあと、少女たちが訴える症状は日本もデンマークも同じであることが明確になったことも番組は伝えた。
何よりも子宮頸がんワクチンの副反応が日本に限定された問題ではないことを示したのは数字だった。デンマークでは副反応の訴えは昨年9月までに1159件報告されている。このうち2割は重篤な副反応だという。
約340万人が接種した日本では2475件(昨年3月)だが、総接種数における副反応の割合はデンマークは日本の約3倍に達している。このほか、英国6200件(12年7月)、フランス2092件(13年9月)という副反応を訴える報告数が出ているのだ。
ワクチン接種後、重篤な副反応を訴える患者が多数出たことで、厚労省が接種の勧奨を中止したのは13年6月だ。予防接種法に基づく「定期接種」となってから、わずか2カ月後のことだった。厚労省が迅速な判断を下したとも受け取れるが、先行接種した海外で重篤な副反応が出ているとの情報が多く流れる中、副反応について慎重に研究しないで導入したのはなぜなのか、との疑問が指摘されてきた。NEWS23の報道によって、その疑問はさらに深まったと言えるだろう。
それはともかくとして、海外でも重篤な副反応を訴える患者に対する医療支援が後手に回って、社会から見放されたように感じている少女とその家族が大勢いるというのは深刻な事実である。そうした“被害者”への関心を持ち続け、政府の迅速な対応を働きかける責任がマスコミにはあるのだから、 副反応の問題は今後も追及し続ける必要がある。
◆有効性にも疑問あり
そして、さらに検証すべき“謎”もある。厚労省の予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会の作業チーム報告書は、「このワクチンが使用可能になった2006年から日が浅いため、ワクチン接種した集団において子宮頸がんが減少するという効果が期待されるものの実際に達成されたという証拠は未(いま)だなく」とある。テレビをはじめとした報道機関には、安全性だけでなく有効性にも疑問が残る中で、定期接種となった経緯を追及する責務が残されている。
(森田清策)