今年の「経済大予測」でカギとなる原油安の動向に各誌の関心が集中

◆経済に楽観的見通し

 原油安が続いている。ようやく、日本のガソリン価格も庶民が「安くなった」と実感できるレベルには来たようだ。ガソリン価格の値下がりは25週連続で過去最長。業界ではさらに値下がりは続くとみている。ガソリン価格の低下の原因はもちろん、原油安に由来しているのだが、果たして、原油安がいつまで続くのか、2015年の日本経済、世界経済の動向を占う意味でも重要なキーワードとなっている。

 そこで原油の動向について調べてみると、経済3誌とニューズウィークが幾つかの分析調査を報告している。経済誌は年末から年明けにかけて毎年恒例の「経済大予測」なる企画をするが、その中で原油の動向について予測している。

 週刊東洋経済(14年12月27日~15年1月3日号)では、「2015年はエネルギー価格低下の恩恵を受けられそうだ」と見込む。その要因として、需給構造の変化を挙げ、「供給国での地政学リスクが後退し、リビアやイラクが増産、米国もシェールオイルの開発を続けるなど供給が増える一方で、ブラジル、中国など新興国の成長減速で需要の伸びが鈍化する」ことが原油価格の軟調を生んでいると分析。結果、「エネルギー消費国である日本にとっては大いに追い風で、景気の足を引っ張る円安が一服すればエネルギー安の効果を満喫できるようになる」と楽観的な見通しを立てている。

 週刊ダイヤモンド(同号)にいたっては、「原油価格が1バレル=70㌦前後で推移すれば、実質経済成長率は0・3%程度押し上げられる。原油価格下落に支えられてゼロ近辺にまで低下した潜在成長率を上回る成長が継続する」(河野龍太郎・BNPパリバ証券チーフエコノミスト)と手放しの喜びようだ。

◆ロシアの危機に不安

 これに対して、週刊エコノミスト(1月6日号)は原油安がロシア経済に与える影響をわかり易く説明している。奇しくもロシアは昨年ウクライナ問題においてクリミアを編入したことから欧米諸国が経済制裁を課している状態。それでなくとも経済が疲弊しつつある中で最も頼りにしている原油の価格が低下すれば、危機に陥る可能性があるというのだ。同誌は、「原油価格が1バレル=1㌦低下するたびに、ロシア政府に流入する資金は約20億㌦減少する。…政権延命を最優先するプーチン政権が、経済危機の深刻化を受け、政治、経済政策をどう方向転換するかが、2015年の最大の焦点だ」(名越健郎・拓殖大学海外事情研究所教授)と分析している。石油・ガスはロシアの輸出の3分の2、国家歳入の半分を占める。原油急落を受けてロシアの通貨ルーブルは、昨年初めからみると12月中旬では、1㌦=78ルーブルとなり5割も急落した。このままルーブル安が進行していけばロシアは通貨危機を招き、それが世界経済に飛び火する可能性があり、そういう意味では目を離せないという状況になっている。

 一方、経済誌ではないが世界の事件や動向を報道する週刊誌ニューズウィークが1月13日号で、「2015年経済大予測」と題する経済企画を組んだ。ただ、経済予測といっても、経済誌が行うところの各産業の動向や株価や為替の予想といったものではなく、むしろ米国、ロシア、中国、EU(欧州連合)といった大国の覇権について論じたものが多く、それらは分析よりも“読み物”としての性格が強い。

◆予測不能な原油価格

 それはそれで面白いのだが、一つ原油の動向について記事があった。ゴールドマン・サックス・アセット・マネッジメント元会長のジム・オニール氏の論文だが、彼によれば、「(原油の)現物価格は今や先物価格の80㌦を大きく下回っている。原油価格は今年も短期的には下落を続けるかもしれない。しかし年末には年初の価格を上回っている可能性が高い」と語る。もっとも、ジム・オニール氏は、「博士論文のために今から35年も前にOPECについて研究調査したが、その結論は、原油予測などやるものではない。原油の均衡価格は存在するだろうが、投機筋の売買などのために価格変動が大きすぎ、予測は役に立たない」とも語る。

 それでも人類が生存するうえで原油エネルギーは現在では不可欠のものとなっており、原油価格の動向に関心が向かうのは当然のこと。ましてや原油の生産地が政情不安定な中東に偏在している限り、その中東情勢にも目が離せないということになる。

(湯朝 肇)