神の贈り物
韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」
現代グループの創業者、故鄭周永会長は太陽に向かって怒った人間だ。仕事をしたいのに、どうして早く日が昇らないのかと腹を立てたのだという。米屋を運営していた若い頃、彼は毎日、早朝3時に起きて店舗を整頓した。やがて空が白んで夜が明けると、彼の胸はドキドキしはじめた。その日に起こることに対する期待とときめきのためだ。
勤勉は無一文の鄭周永を成功に導く元手だった。彼は江原道の山奥の百姓の息子として生まれ、やっとのことで小学校を卒業した。家の暮らし向きがよくなかったが、決して自分の不運を恨まなかった。少年・鄭周永は学力不足を補おうと手当たり次第に本を求めて読んだ。李光洙の新聞連載小説『土』を読むため、月夜に往復十里(日本の1里に相当)の道を歩いたりもした。彼は誰よりも勤勉だった。建設会社をつくった時、現場に一番早く出勤したのが他ならぬ鄭周永だった。財閥の会長になっても変わらなかった。早朝に子供たちを集めて一緒に食事をしながら勤勉さを訓育した。彼は平素、「時間は誰にでも与えられた平等な資本金」だと力説した。鄭周永はその資本金一つでみすぼらしい暮らしを偉大な人生に育て上げた。
ナポレオンは時間を分秒単位で惜しんで使った戦略家だった。彼は戦時に軍隊と砲台の配置、軍需品を緻密に点検した。それだけでなく兵士たちが食べるパンと菓子、酒瓶の数まで正確に把握していた。それだけに戦略は緻密で一寸の誤差もなかった。彼自らが計画しなかったことが起こったことは一度もなかったと吐露したほどだ。ナポレオンは「今日の私の不幸は、私がいつか間違って使った時間の報復だ」と言った。時間管理の戦略家らしい恐るべき語録だ。
「時間を無駄遣いしないで」。80歳を目前にしたフランシスコ・ローマ法王の苦言が胸を打つ。法王は数日前、バチカンを訪れたドイツの青年たちに「私たちの人生は時間でできており、時間は神の下さった贈り物」だと語った。インターネット、スマートフォン、テレビなどにはまり過ぎないで、本当に重要なことに時間を使うよう求めた。
時間はトイレットロールのようなものだと言われる。だんだん速度が速くなる現象がよく似ているためだ。人生のロール紙は公平だ。金持ちであっても貧乏人であっても皆、一つだけ与えられている。交換や払い戻しもない。あなたのロール紙は今、どれだけ残っているのか。
(8月8日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。