イスラム過激派と穏健派


地球だより

 イスラム過激派の動きが、イラクをはじめとしたシリアなどの中東諸国および国際社会を悩ませている。

 イスラム過激派の特徴は、厳格なイスラム法(シャリア)に固執して、シャリアを憲法とするイスラム国家建国に邁進(まいしん)することにある。

 国際テロ組織アルカイダしかり、同組織の流れを汲(く)み、イラクの首都バグダッドに向けて進軍する「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」、ナイジェリアで女子生徒276人を誘拐した「ボコ・ハラム(西洋の教育は罪)」、タリバン、ヌスラ戦線などが典型だが、彼らは支配地域にイスラム法を厳格に適用、女性にはニカブを着用させるなど、具体的に生活圏までコントロールしている。

 彼らの最も反民主的な性質は「自分だけが正しい」とする独善性で、その結果、他の宗教や宗派を認めない排他性を生み、対立構造を拡大していくことだ。

 過激派と穏健派の一線はどこで引くべきか。暴力を用いる、用いないにかかわらず、独善性と排他性を持つか、他との共存を指向するかの違いと見るべきだろう。

 その観点からすれば、中東全域で隠然たる力を持つ「ムスリム同胞団」は、自分たちは穏健派だと主張しているが、典型的な過激思想の持ち主だ。

 エジプトの新政権は最近、「宗教宗派間対立をあおる」として、車両に宗教的なスローガンを張ることを禁じた。例えば「あなたはきょう、預言者を称えましたか?」などの標語だ。

 新政権は、信教の自由を保証するために、政教分離による市民国家(宗教国家でもなく軍事国家でもない)を目指す姿勢を打ち出している。

(S)