コロナ失業互助活動に賛否ーフィリピンから


地球だより

 フィリピンでは新型コロナ感染の急増で医療施設が逼迫(ひっぱく)し、再び厳しいロックダウンが実施された。復活の兆しを見せていた経済活動も再閉鎖の憂き目となり、たった数週間でマニラ首都圏を中心に100万人以上が失業した。

 このような状況下、食料などの生活必需品を無料配布する「コミュニティーパントリー」が市民によって自発的に設置され、共感した人々によって同じような支援活動が各地で拡散されるに至っている。

 しかしコミュニティーパントリーをめぐっては、政府関係者が「国民の助け合い精神の象徴」として称賛する一方、国会議員などからは「頼りにならない政府への失望の証し」との見方もあるなど、評価は真っ二つに分かれている。

 また治安当局は、コミュニティーパントリーの背後に政府の評価を貶(おとし)めるための共産勢力の資金が流れている可能性を指摘し、主催者の身元確認や警官の監視を付けるなどしたため、一部が閉鎖に追い込まれた。

 これを受け人権委員会や議会からは怒りの声が上がっており、担当当局の予算を見直すべきとの意見も出ている。

 さらに食料を受け取るため、夜間外出禁止令を破って早朝から並ぶ行為が横行したり、列に並んでいた高齢者が倒れて死亡する不幸な出来事も起きた。一部のコミュニティーパントリーでは、避妊具や酒類を配布するところも出てきており、生活必需品の定義をめぐってカトリック教会からも苦言が出ている。

(F)