養子の“返品”


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 2年前、米国の映画女優アンジェリーナ・ジョリーが仁川空港でわんわん泣いた。彼女は息子のマドックスと別れる時「あまりにも泣いたので、息子は恥ずかしいだろうと思った」と当時を回想した。彼女は6回も振り返り、息子は母親が振り返ることが分かるので、ずっと手を振り続けた。韓流の魅力にはまったマドックスは2019年、外国人選考で延世大学に合格した。母親は息子の入学を支援するために韓国を訪れ家まで決めて帰った。カンボジア生まれのマドックスはアンジェリーナ・ジョリーが02年に養子にした息子だ。彼女は自分が産んだ3人の娘がいるが、3人の子供を養子にして胸に抱いた。

 芸能界のオシドリ夫婦チャ・インピョ(車仁杓)とシンエラ(申愛羅)は“娘バカ”として有名だ。子供たちを抱きしめて「愛してる」とよく言葉を掛ける。夫婦はイェウンとイェジンをそれぞれ05年と07年に養子にした。娘に養子の事実を堂々と知らせ、子供たちの生活をテレビでも公開した。「父さんと言えば、何を思い浮かべるの」という取材陣の質問にイェウンはこう話した。「アイスクリーム。父さんがとても甘いの」。

 文在寅大統領の“罷養”(養子の縁を絶つこと)発言が波紋を広げている。一昨日、児童虐待の解決法として「一定期間内に養子関係を取り消したり、子供と合わなければ養子の息子を交換する方式の対策も必要だ」と表明した事実が伝えられた後、青瓦台(大統領府)のインターネット掲示板には大統領の謝罪を要求するコメントが書き込まれた。「交換・返品可能。子供が品物か」「ペットの犬もそんなにはしない」という抗議も相次いだ。非難が起こると、大統領府の報道官は「大統領の頭の中に“児童返品”という意識自体がない」と言い繕った。とうとう国民が大統領の頭の中まで心配するようになったのだ。

 ちょうど今回の事態を予見でもしたかのように、2人の息子を養子にした崔在亨監査院長は10年前のインタビューで,「養子は、子供たちを陳列棚にある品物を選ぶように選ぶものではない」としながら、「子供に愛と家庭という垣根を無条件で提供するという誓いがなければならない」と述べた。父母より子供の立場から養子を決定しなければならないという話だ。

 養子が心で子供を生む高潔な意識だとすれば、罷養は子供を2回捨てる薄情な行為だ。本当に返品する対象は大統領の無情な思考の方だ。

 (1月20日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。