ロシア疑惑めぐるバズフィード“スクープ”
米メディアの偏向に批判高まる
裏付け不十分で大々的報道
ロシア疑惑をめぐって、メディアの偏向した報道姿勢が改めて問われることになった。今月中旬、「トランプ米大統領が元顧問弁護士のマイケル・コーエン氏に議会にうそをつくように指示していた」という衝撃的なニュースが一時メディアをにぎわした。しかし、その後、ニュースサイトによる誤報の可能性が高いことが判明。裏取りができていない情報を大々的に報じたメディアの姿勢は批判を呼んだ。(ワシントン・山崎洋介)
きっかけは、米ニュースサイト「バズフィード」の17日の“スクープ”だった。その内容は、トランプ氏がモスクワの「トランプタワー」の建設計画について議会にうそをつくように指示したというものだ。
これがもし事実であるなら、偽証教唆などの罪に当たる恐れがある重大な問題だ。野党民主党の議員らは、この報道を受け調査を求める声を上げた。
バズフィード報道は、モラー特別検察官の調査に精通していると主張する2人の匿名情報源によるものだとした。問題だったのは、裏付けが不十分なまま、メディアで大統領の弾劾や辞任の可能性についての議論が過熱したことだ。
例えば、トランプ氏に批判的なMSNBCキャスターのケイティー・ター氏は、番組冒頭で「トランプ氏は大統領就任以来、最も打撃的な報道に直面している。これは大統領の弾劾につながる可能性がある」と発言するなど、センセーショナルに報じた。
特に力を入れて報じたのは、CNNテレビやMSNBCテレビだった。保守系ニュースサイトの「デイリー・コーラー」によると、18日の朝から午後8時ごろまでに、出演者が「弾劾」という言葉を口にした回数は、CNNが82回、MSNBCは97回に上った。
こうした報道が一斉に止(や)んだのは、情報元となっていたモラー氏の事務所が18日夜、バズフィードの記事を否定する異例の声明を発表したことだ。それによると、「マイケル・コーエン氏の議会証言に関して、特別検察官事務所への具体的な発言、および入手した文書や証言に対する記述は正確ではない」と主張。バズフィードは、報道の間違いを認めていないものの、その後、ワシントン・ポスト紙による取材に対し特別検察官事務所関係者らは、バズフィード報道について「間違いだ」と答えたという。
ロシア疑惑に対する報道では、メディアの誤報がこれまで相次いだ。デイリー・コーラーは、ロシア疑惑をめぐってCNNやABCニュースなど大手メディアによる11の誤報の例を挙げ、今回のバズフィードについて、「残念なことに、共謀を証明しようとする強迫観念が彼らのジャーナリストとしての能力を損ない、修正、撤回、および謝罪が繰り返されている」と、反トランプのスタンスによって報道が歪(ゆが)められていることを問題視した。
バズフィード報道に踊らされた形のリベラル・メディアの報道姿勢に対しても批判が高まった。ジョージ・ワシントン大のジョナサン・ターレー教授は政治専門紙「ザ・ヒル」で、ロシア疑惑をめぐってメディアは、十分な検証をすることなく「バブルと崩壊のパターン」を繰り返していると指摘。「モラー氏が今後、大統領の弾劾につながるような犯罪の具体的な証拠を提示するかもしれないし、しないかもしれないが、後者の可能性を拒否しているようだ。これがメディアの報道をますます歪めている」と、その報道姿勢に疑問を呈した。






