超党派訴えるトランプ氏
米中間選挙、「経済」が前面に
トランプ米大統領が30日、初の一般教書演説を行い、「今こそ米国の新時代だ」と訴え、移民制度改革や大型インフラ投資の実現に向け超党派の協力を呼び掛けた。民主党やメディアなどに対する挑発的な発言を抑制する一方、11月の中間選挙に向け、好調な経済を前面に打ち出す姿勢を示した。
(ワシントン・山崎洋介)
上院の焦点区五つ、下院は民主有利か
トランプ氏は、演説で経済政策に長い時間を割いた。240万人の雇用を創出し、小規模企業の景況感も良く、株価が最高値を更新し続けているなどと強調。また、公約通り減税と税制改革を実現させたとして、成果を訴えた。その上で、今後10年間で1兆ドル規模と表明していた大型インフラ投資を、1・5兆ドルに増額し、議会に法律の制定を求めるとした。
ワシントン・タイムズ紙(31日付)は、「トランプ氏の演説は、中間選挙を控える中、共和党議員や自身にとって、経済が重要な意味を持つことを際立せた」と指摘する。
次の中間選挙で、上院は定数100のうち34議席が改選となる。選挙分析に定評があるバージニア大学政治センターのラリー・サバト所長によると、現時点で共和党系候補が49議席を固めているのに対し、民主党系会派が46議席を確実にしていて、残る5議席を争う展開になっている。議長を兼務する副大統領の投票で法案を可決できる50議席に向け、共和党が有利な状況だ。
一方、435の全議席が改選される下院は、現在、共和党が239に対し、民主党は193で欠員が3。共和党のポール・ライアン下院議長によると「大統領の最初の中間選挙では平均で32議席減らす」とされ、大統領への評価次第では、民主党が過半数を握ることも十分に考えられる。
最近の世論調査によるトランプ氏の支持率は、ギャラップ社が38%、ラスムセン社が44%と伸び悩んでいる。
その一方、政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」によるとトランプ氏の経済政策への支持率は50・9%に上る。共和党としては、経済面における実績をアピールしたいところだ。
ワシントン・ポスト紙は30日付(電子版)で、「トランプ氏の評判が共和党への逆風を強めている」と指摘。このため、同党議員らは「トランプ氏の言動よりも、税制改革がもたらすメリットに注目が集まることを望んでいる」としている。
共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は「税制改革によって、賃金の上昇や機会の拡大を生み出す環境がすでにできつつある」と強調する。
これに対し、民主党議員は、現在の好景気はオバマ前政権の取り組みによるものだと主張する。同党のチャック・シューマー上院院内総務はトランプ氏の演説前に、「トランプ氏はすでに好調だった経済を前任者から引き継いだというのが事実だ」と述べた。
ワシントン・ポストとABCテレビが先月実施した合同世論調査によると、現在の経済状況についてオバマ氏の功績だと考える人は50%で、トランプ氏の38%を上回った。
大型インフラ投資の実現には超党派の合意形成が欠かせない。演説の中でトランプ氏は、「違いを脇に置き、一致点を見い出すよう求めたい」と訴え、移民制度改革とともに、民主党に対して協力を呼び掛けたが、会場にいたナンシー・ペロシ下院院内総務ら民主党議員たちは厳しい表情を崩さなかった。
中間選挙に向け、大型インフラ投資や移民制度改革をめぐり両党の駆け引きが活発化することが予想される。