米政府の情報漏洩相次ぐ、 内部にトランプ政権弱体化を狙う勢力か

 米政府内から機密情報が相次いでメディアにリークされている。トランプ大統領の追い落としを狙う勢力が漏洩(ろうえい)しているとの指摘もあり、情報の管理はトランプ政権の大きな課題となっている。(ワシントン・岩城喜之)

外交・安保に大きな影響
情報管理徹底へホワイトハウス・スタッフ刷新も

 トランプ氏に不都合な情報がメディアにリークされることは政権発足前から行われていた。ただ、ロシア疑惑に絡むリークが先月中旬から急増したことで、連日のように内部情報が報道される「異常な状態」(米メディア)が続いている。

爆発物の起爆装置

英中部マンチェスターのテロ現場に残された爆発物の起爆装置の一部の可能性がある残骸=米紙ニューヨーク・タイムズ提供(AFP=時事)

 ブッシュ(子)政権で中央情報局(CIA)長官の上級顧問を務めたロバート・デイツ氏は、「(トランプ政権は)近年で最も情報がリークされている政権だ」と指摘する。

 こうした情報漏洩は、トランプ氏が先月10日にホワイトハウスでロシアのラブロフ外相と会談した際、過激派組織「イスラム国」(IS)のテロ計画に関する情報を明かしたことから、当局者が反発して行っているとの見方がある。

 また、トランプ氏がコミー連邦捜査局(FBI)長官を突然解任して職員の反感を買ったことが一因だとの指摘もある。

 ただ、漏洩先はニューヨーク・タイムズ紙をはじめ「反トランプ」報道を続けるメディアが多いことから、トランプ氏の追い落としを画策する勢力が政府内に存在しているとの見方も根強い。

 現政権の機密情報を知ることが不可能な元政府当局者が情報元になっているケースもあり、オバマ前政権から残っている政府職員が「元同僚」に情報を流すなど、「内部からトランプ政権を妨害しようと試みている可能性がある」(FOXニュース)との声もある。

 CNBCテレビのコラムニスト、ジェイク・ノバク氏は「最近のロシア疑惑をめぐるリークは、トランプ氏を大統領執務室から追い出そうとする表れだ」と主張する。

 ノバク氏は、トランプ氏がテロに関する情報をロシア側に話したことは違法でないとし、「本当に驚くべきニュースは、正式な選挙を経て就任した米国の大統領が、クーデターの標的にされているかのような状況にあることだ」と批判する。

 一方、政府内からのリークは安全保障や同盟関係にも影響を及ぼしている。

 英中部マンチェスターで先月22日に発生した自爆テロの2日後、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)にはテロ容疑者の名前や現場で回収された証拠品の写真が掲載された。

 いずれも英当局が発表する前のものだったことから、英政府は米側に提供した機密情報がリークされたとみて、情報共有を一時停止した。

 ケリー米国土安全保障長官はNBCテレビの番組で、情報が漏洩したことについて「国家への反逆に近い」と断罪。トランプ氏も「機密情報の漏洩は国家安全保障に深刻な脅威となる」との声明を発表するなど対応に追われた。

 ワシントン・タイムズ紙のコラムニスト、メーセデス・シュラップ氏は「(一連の)情報漏洩者はトランプ政権を弱体化させ、混乱させようとしている」と指摘した上で、「(機密情報のリークは)トランプ政権を傷つけるどころか、米国の安保に大きな損害を与える」と厳しく非難する。

 トランプ政権は機密情報の管理を徹底するためホワイトハウスのスタッフを刷新する計画だが、メディアへのリークを完全に防ぐことは難しい。

 ノバク氏は「今後もリークは続くだろう」とし、政治的な思惑による情報漏洩に惑わされないよう警鐘を鳴らしている。