中国製機器が米国防総省に、通信傍受や破壊工作の懸念

ビル・ガーツ

 中国政府との関連が指摘される同国大手通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)が、米国防総省と国土安全保障省に通信設備を売却していたことが、国防総省科学委員会の報告「サイバー・サプライ・チェーン」で明らかになり、通信傍受や破壊工作へ新たな懸念が生じている。

 報告は「悪意のあるソフトウエアの挿入によって、成功しなかったものの、重要な兵器システムが攻撃を受ける可能性があったことが分かった」と、外国からサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性を悪用して、米国の兵器・機器にサイバー破壊行為が仕掛けられる危険性を警告している。

 中国深圳に本社を持つスマートフォンの世界的大手、ZTEは、米国の下請け企業を通じて国防総省と国土安保省に機器を供給している。米当局者によると、下請けにすることで、中国通信機器の使用を禁じた措置を回避することができる。

 ZTEは3月、6年間の調査の後、米国の制裁に反して米国製の通信機器をイランと北朝鮮に不法に供給していたことが発覚し、司法取引の結果、司法省から11億9000万㌦の罰金を科せられた。これによって米国内での事業継続が認められ、フロント企業として使われた下請け企業を通じて行われた取引への捜査も中断された。

 下請け企業の詳細は不明のまま、国防総省と国土安保省への売却の詳細も分かっていない。

 米企業を下請けにして政府に製品を販売すること自体は違法ではなく、中国企業の国防総省や国土安保省への物品販売に関する規則も存在しない。

 セッションズ司法長官は3月、「ZTE社はイランのような敵対国の手に米国の重要な技術が渡るのを禁じる輸出規制に抵触しただけでなく、連邦政府捜査官をだまし、社内の弁護士や調査担当者をもだましていた」とZTEを非難した。

 ZTE製品の政府への売却は連邦議会でも問題視され、中国が米軍の兵器や装備の調達のためのサプライチェーンに侵入し、破壊活動に使われる危険性が指摘された。

 悪意のあるソフトウエアが埋め込まれ、ある時点で米軍の兵器システムや装備を破壊する可能性が指摘されている。

 この問題は11月、民間セキュリティー企業が、中国の携帯電話などのソフトウエアに、機器のすべてのデータを72時間ごとに中国に送ることができるバックドア(裏口)が仕込まれていることを明らかにしたことで、注目されるようになった。

 アンドロイド携帯にプリインストールされたこのソフトウエアは、中国の上海ADUPS技術が製造し、7億台以上の電話、車などのスマート機器に搭載されている。

 これを発見した米セキュリティー企業クリプトワイヤーによると、このソフトウエアで、テキストメッセージ、連絡先、通話記録、位置情報などの全データを中国にあるサーバーに送ることができるという。

 ADUPS社のサイトによると、同社のソフトウエアは、中国の世界的大手携帯電話メーカー、ZTEとファーウェイ両社の製品に搭載されている。