米で大麻合法化の動き広がる

11月に5州で娯楽使用を問う住民投票

国民の抵抗感なくなる

 米国で大麻(マリフアナ)の合法化を求める動きが広がっている。すでにコロラド、オレゴンなどの4州と首都ワシントンで娯楽用としての使用が認められているが、11月にはカリフォルニアやネバダなどの5州でも合法化を問う住民投票が行われる。こうした背景には、大麻に対する米国民の抵抗感がなくなっていることが指摘されており、「今後、多くの州で合法化される可能性がある」(米メディア)との懸念もある。
(ワシントン・岩城喜之)

オバマ大統領の甘い態度が一因との指摘も

 「米連邦法で禁止されている大麻の規制緩和を進め、将来の合法化に向けた道筋を準備する」

 先月行われた民主党大会で採択された綱領には大麻について、このような記述が盛り込まれた。

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ホワイトハウス前で大麻を吸い、規制緩和を訴える活動家ら(UPI)

 民主党が合法化に前向きな姿勢を示しているのは、「大麻の使用を求める活動家が党員に多い」(米メディア)ためで、ヒラリー・クリントン前国務長官も規制緩和を示唆している。

 これに対し、共和党は「米政府と議会は、国民の健康と安全のために長期の影響を考慮し、問題への対処に準備する必要がある」と綱領に記載し、大麻の合法化について否定的な見方を示した。

 両党の見解が対照的なことに加え、11月の大統領選に合わせてカリフォルニア、マサチューセッツ、メーン、アリゾナ、ネバダの5州で合法化を問う住民投票が行われることから、「大麻は選挙で注目すべき争点となっている」(米メディア)。

 ただ、大麻に対する米国民の抵抗感が少なくなっているため、仮に今年の住民投票で否決されても合法化への流れは変わらないとの指摘もある。

 米ギャラップ社の世論調査によると、2003年の時点で「大麻の合法化に賛成」は34%だったが、14年には51%まで上昇した。さらに同社が今年7月に行った調査では、「現在も常用的に大麻を吸っている」との回答は13%で、13年の7%からほぼ倍増していた。

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 こうした米国民の意識の変化は、現在25州で認められている医療目的での大麻使用が背景にある。ワシントン・タイムズ(WT)紙は「多くの州が医療目的での大麻使用を解禁したため、大麻に対する抵抗感がなくなっている」と指摘する。

 一方で、オバマ大統領の大麻に対する態度が拒否感をなくした一因になったとの指摘もある。これまでにオバマ氏は「(大麻は)アルコールより危険が大きいとは思わない」「悪い習慣という意味では、たばこと大差ない」などと主張してきた。

 こうした発言について、WT紙は「オバマ氏の大麻に対する甘い認識が合法化の流れを後押ししている」と非難。保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のチャールズ・スティムソン上級研究員も「大麻には中毒性があり、身体と精神に害を及ぼすことは科学的な研究で明らかになっている」と反論している。

 また、大麻が解禁された州では多くの問題が生じていることからも、オバマ氏の主張を疑問視する声がある。WT紙によると、コロラド州では大麻が合法化されてから中毒センターへの通報が多くなり、大麻使用者の入院が増加。さらに家に置いてあった大麻入りのチョコレートやクッキーを子供が食べ、救急搬送されるケースも急増している。

 こうしたことから米麻薬取締局(DEA)は11日、大麻を規制リストから外せば「乱用の恐れがある」とし、規制緩和を求める訴えを拒否。「ヘロイン」や幻覚作用のある「LSD」などと同列に扱ってきた分類は変えないと発表した。

 ただ、今後は住民投票の結果により多くの州で大麻の使用が認められる可能性が高い。

 スティムソン氏はいずれ連邦法の撤廃を求める運動が活発になると指摘し、次のように懸念を示す。

 「大麻が流通している地域では犯罪が増えており、合法化は地域や社会に負の影響を与えることになるだろう」