名誉回復のため戦った日系米国人

「442連隊」テリー・シマさんの講演要旨

 第2次世界大戦で勇猛に戦った米陸軍の日系2世部隊「第442連隊戦闘団」は、米軍史上、最も多くの勲章を受けた部隊として知られる。日米開戦後、日系人が強制収容などの苦難に直面する中、2世兵士たちはどのような思いで名誉回復に取り組んだのか。「日米研究インスティテュート(USJI)」がワシントン市内で先月開いたシンポジウムで、442連隊の元兵士テリー・シマさん(92)が行った講演の要旨を紹介する。(ワシントン・早川俊行)

第2次大戦で国への忠誠示す

昭和天皇が復興業務円滑化に謝意

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 テリー・シマ氏 1923年、ハワイ生まれ。両親は沖縄県出身。第2次世界大戦中に徴兵され、米陸軍の日系2世部隊「第442連隊戦闘団」の一員となり、広報任務を担当。戦後は「日系米国人退役軍人協会(JAVA)」事務局長などを務める。2013年にオバマ大統領から文民に対する2番目に高い勲章である「大統領市民勲章」を授与される。同年、日本政府より旭日小綬章を授章。

 1941年12月7日に真珠湾が攻撃され、日系人に対する集団ヒステリーが巻き起こりました。私たち2世は日本帝国の協力者、破壊工作員と見なされたのです。軍務に不適格な外国人を意味する「4C」に指定され、米軍への入隊が認められなくなりました。これは米政府から縁を切られたも同然でした。

 米政府は日系人を見捨てましたが、2世たちは米国への忠誠を失わず、戦争に行かせてほしいと嘆願しました。米政府はこれを聞き入れました。ルーズベルト大統領は43年、日系2世による第442連隊戦闘団の編成を認めたのです。

 2世たちはこれを国家への忠誠を示す機会と捉え、ハワイから2500人、米本土から1500人の志願者が入隊を認められました。本土志願者の多くは強制収容所に入れられていた者たちでした。

 442連隊は44年、欧州戦線に送られ、イタリアとフランスで困難な任務を与えられましたが、勇猛果敢に戦いました。米陸軍は戦争終結後、442連隊を第2次世界大戦で最も目覚ましい活躍をした部隊と認定したのです。

 約1万人の2世が442連隊に加わる一方、両親の祖国の兵士たちと戦うアジア・太平洋戦線では、約4000人の2世がリンギスト(語学兵)として、押収した文書の翻訳や捕虜の尋問、通信傍受などを担当しました。彼らはまた、洞窟にいる日本兵に降伏を説得する役割も担いました。危険な任務でしたが、2世たちは命を救うためにそれを引き受けたのです。

 日本兵の捕虜の中には、米国のために戦う2世を裏切り者と非難する者もいました。これに対し、2世は裏切り者ではないと説明しました。2世兵士も日本兵と同じように、両親から主君に忠誠を尽くす武士道の精神を教えられたのだと。また、日本語で「お母さん」と言いながら死んでいくこと、お守りや千人針を携帯していることなど、日本の伝統を戦場に持ち込んでいると伝えたのです。

 日本が降伏すると、2世たちは占領軍で日本復興のために懸命に働きました。2世リンギストたちに与えられた任務の一つは、英語が話せない日本当局者と日本語が話せない米当局者の橋渡しをすることでした。

 マッカーサー元帥の通訳だったカン・タガミ氏は、皇居で天皇陛下と私的に会話する機会がありました。陛下はタガミ氏に両親の出身地などを尋ねられた後、2世が業務を円滑にしてくれていることに謝意を示されたのです。2世たちはこれを最高の賛辞と受け止めました。

 戦争は終結しましたが、米政府には解決すべき問題がもう一つ残っていました。それは日系人を米社会に統合することです。

 トルーマン大統領は46年7月15日、442連隊を閲兵し、「君たちは国外で敵と戦い、国内では偏見と戦い、それに勝利した」と語ったのです。大統領の発言は日系人の忠誠を認めるとともに、人種差別と偏見に打ち勝つことを意図したものでした。

 ルーズベルト氏はヒステリーを許容して日系2世に対する不実の汚点を残しました。しかし、心が広く公正なトルーマン氏は自らの言葉でその汚点を取り除いたのです。これは2世の歴史の中で重要な意味を持つ出来事でした。

 日系2世や黒人戦闘機隊「タスキギー・エアメン」の活躍は第2次世界大戦後、マイノリティーに均等な機会を与える改革の機運を生む一助となりました。第2次世界大戦中、日系人の最高位は少佐で、それもわずか4人でした。職務はほぼ歩兵に限定され、海軍、海兵隊への配属は禁じられていました。しかし、ベトナム戦争では日系人が全軍種に所属し、同戦争後には43人の日系人が将官に昇格しました。

 88年に制定された「市民自由法」には、強制収容は不必要で、ヒステリー、人種的偏見、政治指導部の失政に基づくものだったことが明記され、これがレーガン大統領の公式謝罪につながりました。

 2011年には、米議会が2世部隊に最高位の「議会黄金勲章」を授与しました。近年では、故ダニエル・イノウエ上院議員が上院議長代行として、大統領継承順位第3位の地位に上り詰めました。

 日系米国人の歴史は、米国の偉大さとともに、強固な日米関係を築く上で2世が果たした役割を物語るものなのです。