不景気でも衰えぬブラジル人の個人起業
地球だより
ほんの数年前まで、中国やインドと共にBRICS(新興経済国)の一角として気を吐いていたブラジルが不景気のまっただ中だ。失業率は過去5年で最悪、インフレも10%を超える勢いで庶民の懐を直撃、さらには現職の官房長官までも巻き込んだ国営石油会社の巨大汚職事件や80年ぶりの大干ばつなど、ラテン気質の陽気なブラジル人でも頭を抱えるような状況となっている。
また、ブラジル中西部の大都市では、給料遅配などの理由により、ストライキで街中のゴミが10日以上も放置されたままになった。一方で、この都市では、億単位の使途不明金が発覚、現地マスコミが追及している。
普通であれば、職を失い、社会に対する希望も失いかねない状況だが、ブラジルの大手紙が先日、このような状況の中で自営業に挑戦する人が増えているという記事を掲載していた。実際に収入を以前より増やしている人が少なくないという。
確かに、ブラジル人は独立を望む傾向が強く、個人起業率は世界で最も高い部類に入ると言われる。社会主義時代の影響を受けているためか、ブラジルでそれなりに大きな会社を興し、経営することは、雇用や税制を含めて実に骨が折れるが、あくまでも個人起業であれば、税金の仕組みなども実に簡単だ。
また、零細・中小企業の起業を支援する政府団体によるサポートもあり、起業相談や職業訓練を含めて個人が起業しやすい環境は整っている。
不景気の嵐の中で、あえて起業しようとするブラジル人の前向きな姿勢には、他の選択肢が限られているとはいえ、感心するばかりだ。
(S)