米 インド太平洋戦略発表 同盟強化で中国に対抗
バイデン米政権は11日、「インド太平洋戦略」を発表した。地域で勢力拡大を図る中国に、日米豪印の枠組み「クアッド」や東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係強化を図るなど、積極的に関与していく方針を示した。
戦略は、中国について「経済、外交、軍事、技術の力を結集し、インド太平洋における勢力の拡大を図り、世界で最も影響力がある大国になろうとしている」と警戒感を表明。その上で、「中国がインド太平洋と世界に利益をもたらしてきたルールや規範を書き換えるかどうかは、今後10年間のわれわれの取り組み次第だ」と強調し、対抗する姿勢を示した。
中国によるオーストラリアへの経済的圧力やインドとの国境紛争、台湾や東シナ海、南シナ海などにおける周辺国への脅威について言及し、同盟・友好国が「中国の有害な影響により大きな負担をかけられている」と指摘。米国は「台湾海峡を含む同盟・友好国への軍事侵攻を抑止する」と明記した。
一方で、米政府高官は記者団に「中国を変えることには限界があると認識している」とした上で、「米国や同盟国の目的を妨げる中国の取り組みを抑えつつ、中国の周辺に影響力のバランスを構築することを目指す」と指摘。戦略では、中国との対決色を前面に出さずに、周辺国との関係強化をより強調した。気候変動問題や核不拡散で中国と協力することも模索するとした。
クアッドについては、国際保健、気候変動、新興技術、インフラなどの面で引き続き協力を深めるとしたほか、ASEANとの協力も探るとした。また1~2年のうちに実施することとして、米ASEAN特別首脳会議をワシントンで初開催することや島嶼(とうしょ)国へのインフラや海洋安全保障面での支援を挙げた。
戦略は、オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイの5カ国を挙げ、同盟関係を強化する方針を示した。また、「特に日本と韓国について、同盟・友好国が相互に関係を強化することを奨励する」とし、悪化している日韓関係の改善も促した。北朝鮮の核・ミサイル問題については、特に日韓両国との協力によって対応するとした。
経済安全保障面では、今年の早い時期に「インド太平洋経済枠組み」を新設する方針。貿易や投資を促進し、サプライチェーン(供給網)の強化を図るとした。
(ワシントン 山崎洋介)