チリ大統領選 右派と左派の候補が激突
決選投票にもつれ込む公算
南米チリで21日、現職ピニェラ大統領の任期満了に伴う大統領選が実施される。世論調査会社CADEMの世論調査(5日発表)によると、共和党党首で右派のホセアントニオ・カスト元下院議員(55)が支持率25%で首位、元学生運動家で左派のガブリエル・ボリッチ下院議員(35)が19%で次点につけている。
大統領選には7人が立候補しているが、カスト氏とボリッチ氏による決選投票にもつれ込む可能性が高い。決選投票の世論調査では、カスト氏の支持率44%に対してボリッチ氏が40%と接戦になっている。
チリは、政治・経済共に南米の中では比較的安定しており、自由貿易と市場経済を重視する「南米の優等生」とも言われてきた。だが、近年は広がる格差に国民の不満が高まっており、2019年10月に大規模な反政府デモが発生した。格差は新型コロナウイルス禍を受けてさらに広がっている。
チリ共産党と選挙連合を組んでいるボリッチ氏は、富裕層や鉱山への増税など格差是正を主な公約としており、大統領選の当初はカスト氏を超える支持率を得ていた。ボリッチ氏はまた、「当選すれば環太平洋連携協定(TPP)を批准しない」と主張している。
一方、カスト氏は、過去にピニチェト政権を支持した発言などから「極右」との批判もある。ただ、移民排斥を含む治安強化を公約の前面に押し出したことから、秩序回復を求める国民の間で急速に支持を伸ばしている。
南米では、昨年11月のボリビア大統領選と今年7月のペルー大統領選で、反米左派と共産系候補が相次いで当選し、左傾化の波が続いている。来年10月には南米の大国ブラジルでも大統領選が予定されており、右派と左派の候補が激突しているチリ大統領選は、今後の南米政治の行方を占うものとして注目されている。
(サンパウロ 綾村悟)