上海協力機構・新興5ヵ国会議 ロシア、中国との結束強化
欧米基軸に挑戦、対日でも連携
ロシア中部のウファで8日から10日まで、中国、ロシアと中央アジア4カ国で構成する上海協力機構(SCO)首脳会議と、新興五カ国(BRICS)首脳会議が開催された。両会議を主導するロシアと中国は、欧米基軸に代わる国際政治・経済秩序を構築する構えをアピール。また、プーチン大統領は、北京で9月に行う「抗日戦争勝利記念日」に加盟各国が参加すると表明し、対日歴史問題で中国と連携する姿勢を明確にした。(モスクワ支局)
シベリアの「中国化」に警戒感も
SCO、BRICS両首脳会議には、ユーラシア、南米、アフリカ各大陸から計15カ国の首脳が参加した。プーチン大統領は「参加各国にはそれぞれの経済モデル、成長路線、豊かな歴史と文化が存在する。このような多様性を内包するBRICSとSCOには巨大な潜在力がある」と強調した。
BRICS首脳会議で採択された「ウファ宣言」では、これまでと同様な、BRICSの国際的地位の強化と経済パートナー戦略の拡大が謳(うた)われただけではない。同宣言は、「国際法に違反する一方的な軍事介入や制裁を非難する」と明記し、ロシアのクリミア併合を受けた欧米の経済制裁を批判。また「第2次世界大戦の結果を改竄する試みは認めない」として、歴史問題で日本を牽制(けんせい)する中国と歩調を合わせる構えを示したのだ。
BRICS首脳会議は、1000億㌦の資本金を持つ「新開発銀行」と、同じく1000億㌦の資金を持つ外貨準備基金の運営を年末にも始める意向を固めた。制裁批判に加え、世界銀行や国際通貨基金(IMF)に対抗する金融システムの運営開始は、中露首脳が政治的にも経済的にも欧米基軸に挑戦し、それに代わる国際政治・経済秩序を構築する姿勢を露骨に示すものである。
一方で今回のSCO首脳会議では、SCO創設以来初めてとなる加盟国の拡大に向け、インドとパキスタンの正式加盟に向けた手続きを開始すると決めたことが注目される。これが実現すればSCOは、ユーラシア地域の国際的枠組みとして影響力がさらに拡大していくことになる。
かつてプーチン大統領は国際会議などで、「ロシアは欧州の一部」と語っていたが、ウクライナ問題で日米欧から経済制裁を科され孤立する中で、中国との連携をさらに拡大する「東方シフト」を一層明確にした。
もっとも、貿易額を見ると、ロシアと欧州間の貿易高がロシア全体の35%を占めるのに対し、中国とのそれはわずか4%。政治面が先行する中、ロシアでは「東方シフトで利益を得るのは中国」との見方は根強い。
BRICSにおける中国の経済力はダントツで、他の4カ国を合わせたものよりも多い。また、この4カ国は、中国の貿易相手国上位5カ国に入っておらず、中国経済への影響力も限定的だ。本来ならばロシアを含めたこの4カ国は、BRICS内で自らの重みを増すべく駆け引きを行うべきなのだが、ロシアはそれ に逆行している。
SCOでは、対欧米軸を強化したいロシアが、渋る中国を説得しインドの正式加盟を後押ししているが、現段階で決まっているのは「正式加盟に向けた手続き開始」である。今後、中国が何らかの条件を出してくる可能性は残っている。
以前からロシアの大きな懸念となっている、ロシア極東地域への中国人の進出はとどまるところを知らない。6月にはロシア極東・ザバイカル地方の農地1150平方㌔が49年の期間で中国側に貸与された。これとほぼ同時にロシア下院は、事実上、同農地内でロシアの法ではなく、中国の法が適用される仕組みを承認した。
もちろんこれは、極東経済を支えるための手段として行われたものだ。しかし同時に中国は、中国北東部の労働力をロシアの人口希薄地域に「輸出」することを国策としており、ロシア極東・シベリアの「中国化」はさらに進むことになる。
ロシア極東で中国と国境を接するユダヤ自治州のレヴィンタリ知事代行は、6月にサンクトペテルブルクで行われた国際フォーラムで、次のように不満をぶちまけた。「自治州の農地の80%は、合法、もしくは非合法な形で中国人に握られている。その農地の80%では、地力を著しく低下させる大豆が栽培されている。中国人が多量に使う毒性の高い農薬も、それに拍車を掛けている」
プーチン政権はロシアの「東方シフト」を推し進めているが、政権内でも、これに反発する意見は強い。