パレスチナ統一政権樹立へ和解

ファタハとハマス、10年の分裂終結へ
イスラエルは警戒続ける

 パレスチナ自治政府のアッバス議長が率いるファタハと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム根本主義組織ハマスが12日、仲介役を務めるエジプトの首都カイロで、2007年から続く分裂の終結を目指し、和解に関する合意に署名した。イスラエル殲滅(せんめつ)を目指すハマスをテロ組織と見なしているイスラエルは、警戒を続けている。(エルサレム・森田貴裕)

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12日、ハマスとファタハの和解合意を喜ぶパレスチナ自治区ガザの住民=UPI

 イスラエルが05年にガザから完全撤退して以降、この地区で勢力を拡大したハマスは、06年1月のパレスチナ立法評議会選挙で大勝し、対イスラエル穏健派ファタハを破り第1党となった。パレスチナでは、対イスラエル強硬派ハマス主導内閣の誕生でファタハとハマスの抗争が激化。07年6月にはハマスが武力でガザを占拠し、ファタハとの連立は崩壊した。以降、ファタハとハマスは分裂の状態となった。テロ組織と見なされたハマスへの支援は次々と停止された。

 11年5月にエジプトの仲介で和解合意したものの進展はなかった。14年4月には統一暫定政権樹立で合意したが、イスラエルがこれに反発。アッバス議長はテロ組織と手を組んだとして和平交渉は中断された。ハマスはその後もガザの実効支配を続け、分裂状態は続いた。

 イスラエル軍は14年にガザ侵攻を行った。それによりガザでは多くの建物が破壊される事態となった。その後の復興のために国際社会が約束した支援金のほとんどがまだ支出されていないという。また、これまで支援を続けてきたカタールは、サウジアラビアをはじめとする中東諸国からの経済封鎖により、支援続行が不可能となった。さらに今年4月には、自治政府が行ってきた電力使用料や公務員給与などガザへの経済支援が大幅に削減された。結果、電力不足や失業率の増加で、ハマスに対する住民の不満が高まっていた。ハマスは9月に、ガザの統治権を自治政府側に移譲する用意があると発表。今月2日には、自治政府のハムダラ首相が官僚らと共にガザを訪問し、和解に向け協議を始めた。

 一方、イスラエルは自治政府とハマスの和解合意に難色を示している。イスラエル紙エルサレム・ポスト(電子版)によると、ネタニヤフ首相は3日、「自治政府は、和解合意の一部として、ハマスがイスラエル国家を認めて武装解除し、イランとの関係を断つことを要求しなければならない」と述べた。また、ネタニヤフ氏に近い関係筋は、「ハマスは武装解除なしにテロ組織を残しながらイスラエルの破壊を求め、(米露に国連と欧州連合=EU=を加えた)中東カルテットの原則を受け入れることなく国際的な正当性を得ようとしている」と批判。和解合意で、「ヨルダン川西岸にハマスなどイランが支援する武装勢力が拠点を構えることになり、治安情勢をより困難にする可能性がある」と警告した。

 報道によると、今回の和解合意により、12月1日までにハマスは自治政府にガザの行政管理を移譲する。自治政府は11月1日からイスラエル国境の検問所を引き継ぐ。エジプト国境のラファ検問所はパレスチナ議長警護隊が管理し、武器密輸を防ぐために欧州のオブザーバーが駐留する。さらに、ハマスが任命した当局者は自治政府に統合され、合同委員会が警察と情報機関を改革する。

 アッバス議長は12日、声明で「協議が分裂解消の最終合意へつながった」と述べ、1カ月以内に10年ぶりにガザを訪問する予定という。

 10日からカイロで行われた両組織の代表団による和解協議では、民事・行政問題に焦点が当てられ、ハマスの武装解除問題などは提起されなかった。11月21日にカイロで開かれる会議では、パレスチナの全党派が参加し、イスラエルとの紛争や統一政権の樹立など戦略的問題が協議される予定。