アフガン米軍撤収、9月に延期
バイデン米政権は13日、アフガニスタン駐留米軍の撤収期限を5月1日から9月11日に延ばすと発表した。反政府武装勢力タリバンは、全ての外国軍が完全撤収するまで、いかなる協議にも参加しないとしており、トルコがイスタンブールで24日に国連などと開催を予定していたアフガン政府とタリバンの和平協議は、タリバンの不参加を理由に延期された。和平協議が暗礁に乗り上げる中、アフガン各地では武力衝突やテロ攻撃が頻発し、民間人にも多数の犠牲者が出ている。
(エルサレム・森田貴裕)
テロ攻撃頻発 犠牲者増加
タリバンの攻勢強まる恐れ
アフガン内務省によると、駐留米軍撤収の発表以降、11日間にタリバンによる爆弾攻撃や自爆テロなどで、女性や子供を含む民間人少なくとも63人が死亡し、180人が負傷した。アフガンのメディアは、同時期に治安部隊要員112人が死亡し、76人が負傷したと伝えた。治安部隊幹部や警察署長も爆弾の爆発により死亡したという。政府軍や治安部隊とタリバンの戦闘で、タリバン側も多数の戦闘員が死亡した。
国連によると、今年に入り3カ月間に民間人573人が死亡、1210人が負傷した。昨年の同時期と比較して民間人の犠牲者は29%増加したという。
期限内のアフガン駐留米軍撤収完了は難しいという考えを示していたバイデン大統領は14日、2001年の米同時多発テロから20年を迎える9月11日までに、駐留米軍を全面撤収すると宣言した。撤収後もアフガンへの外交的・人道的支援は継続し、軍事以外の努力を続けていくという。
トランプ前政権と反政府武装勢力タリバンとの2020年2月の和平合意では、タリバンが同時多発テロを首謀した国際テロ組織アルカイダとの関係を断つことなどを条件に、駐留米軍の完全撤収期限を今年5月1日までとしていた。また、駐留米軍を2500人規模に削減した。
バイデン政権は撤収期限を延長したが、これで米史上最長の戦争と呼ばれるアフガン戦争がようやく終結を迎えることになる。しかし、首都カブール奪還やアフガニスタン・イスラム首長国の再樹立を目指すタリバンがアフガン政府への攻勢をさらに強める可能性がある。
米中央軍のマッケンジー司令官は、駐留米軍が撤収した後、アフガン政府軍がタリバンの攻勢に耐えられなくなる恐れがあると指摘する。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が米当局者の話として報じたところによると、マッケンジー司令官、アフガン駐留の北大西洋条約機構(NATO)軍を率いるスコット・ミラー司令官、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、現在のアフガン駐留米軍2500人を残したうえで、並行して外交努力により平和協定を結ぶべきだとバイデン氏に助言した。オースティン国防長官も司令官らと同様の姿勢を示し、駐留米軍の完全撤収はアフガンの安定性を損なう恐れがあると警告したという。これを受けてバイデン氏は慎重に検討したが、司令官らの助言に反し米史上最長の戦争への軍事的関与を終わらせる決意を固めたという。
アフガン駐留米軍とNATO軍を率いるミラー司令官は25日、首都カブールで行われた記者会見で、駐留軍撤収の準備を開始したと明らかにした。
アフガン政府が、米軍やNATO軍の軍備および機器などの引き渡しを求めたことについてミラー司令官は「撤収後は基地や機器などを可能な限りアフガン政府軍に移譲する」と述べた。また、「タリバンが米軍やNATO軍を攻撃した場合、われわれは強力な対応を取る」と付け加えた。
NATOは14日、米トランプ前政権とタリバンの和平合意に基づく完全撤収期日の5月1日までには駐留NATO軍の撤収を開始し、数カ月で完了すると発表している。米当局者によると、駐留米軍は自ら設定した目標として7月初旬までの撤収を望んでいるという。
米国主導の有志連合軍のアフガン侵攻により、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者をかくまったとされるタリバン政権は崩壊した。
有志連合軍の撤収開始で、1996年に首都カブールを制圧して政権樹立を宣言した旧支配勢力タリバンの復権の可能性がある。

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