首都に非常事態宣言 レバノン 港湾管理者を自宅軟禁
米報道 爆発原料はロシア船から
レバノン政府は5日、首都ベイルート港湾地区の倉庫で4日に発生した大規模な爆発を受け、首都の治安維持を軍が担う2週間の非常事態を宣言した。また、爆発のあった港湾地区の倉庫の安全などを管理する関係者に対し、原因究明の捜査中は自宅軟禁とすることを命じた。レバノンの国営通信(NNA)などが同日、報じた。
ハッサン保健相は5日、爆発による死者は137人に達し、負傷者も5000人を超え、まだ瓦礫(がれき)の下に数十人の行方不明者がいることを明らかにした。爆発で自宅アパートが損壊し、住めない状況にある人々は推定で30万人とされている。
被災して避難を強いられた国民に対し、アウン大統領は「何が起きたのか、可能な限り早く明らかにする」と述べ、批判の高まりがさらなる政情不安につながることを回避しようとしている。
港湾地区の倉庫には2014年から、爆薬の原料にもなる硝酸アンモニウム2750㌧が押収された後に6年間保管されていた。税関や港湾当局者が国外搬送などの処分を何度か要請していたが、爆発の危険性を認識しながらも放置されていたという。
地元メディアによると、今回の爆発は倉庫で行われていた溶接作業が原因となった可能性が指摘されている。
一方、米メディアの報道によると、押収された硝酸アンモニウムは、7年前にロシア船によってもたらされたもの。
CNNテレビ(電子版)によると、2750㌧の硝酸アンモニウムを載せたロシア船は、ジョージアの港湾都市バトゥミを出発後、モザンビークを目指していたが、財政難のため13年にレバノンのベイルートに寄港。その翌年、運航規則に違反したとして地元港湾当局に差し押さえられた。
船には物資が十分に供給されず、船員への賃金も未払いだったという。
また、トランプ米大統領は5日、爆発の原因について「攻撃だと考える人もいれば、そうではないと考える人もいる」と述べた上で、「今は誰も分からない」と語った。
トランプ氏は前日、爆発について「恐ろしい攻撃に見える」と発言し、「米軍幹部はある種の爆弾による攻撃と考えているようだ」と述べてテロ攻撃を示唆していたが、事実上この発言を撤回した形だ。
(エルサレム 森田貴裕、ワシントン 山崎洋介)