イラクのイラン領事館にまた放火


反政府デモ イラク南部ナジャフで

 ガソリンの大幅値上げを契機に反政府デモが全土に拡大したイラクで27日、イスラム教シーア派聖地がある南部ナジャフのイラン領事館の一部がデモ隊によって放火された。同国中部のシーア派聖地カルバラでイラン領事館が襲撃を受けたばかりで、イラクに介入する隣国イランに対する国民の反発が強まっている。

イラクのデモ隊

27日、イラク南部ナジャフで、炎が上がるイラン領事館の周りに集まるイラクのデモ隊(AFP時事)

 現地の報道によると、ナジャフのデモ隊数百人は、「イラクに勝利を!イランは去れ!」などと叫んで暴徒化。領事館を包囲し、入り口付近でタイヤや毛布、ダンボールなどに放火した。デモ隊の一部は敷地内に侵入したが、治安部隊が実弾や催涙ガスなどを発射して応戦、衝突した。1人が死亡、少なくとも35人が負傷し、事件後、外出禁止令が出された。

 イラクでは、長期独裁のフセイン政権が2003年に崩壊後、政権がイスラム教スンニ派からシーア派の主導に移行したことから、シーア派大国で隣国のイランとの関係強化が進んだ。イランは混迷が続くイラクの政治や経済、治安維持などの広い分野で影響力を行使してきた。

 デモは当初、政府の汚職体質や失業問題への不満に向けられたが、次第にイラクに介入するイランに対する反発へと変化してきた。カルバラのイラン領事館襲撃事件では、治安部隊が実弾を発砲、デモ参加者4人が死亡している。10月以降のデモによる死者数は約350人に上る。

(カイロ 鈴木眞吉)